現場で体験してほしい。
それが「真」の認知症予防活動支援士への
一歩だと思います。
- 松本 政昭 さん(千葉県市川市 在住)
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ICTインストラクター
認知症予防活動支援士
※肩書きや資格は2017年8月インタビュー当時のものです
1. ICT講師のお仕事について-高齢者向け施設での認知症予防講座-
──今のお仕事はいつ頃から始められましたか?
松本政昭さん(以下 松本さん) パソコンやタブレットの使い方を教えるICTインストラクターをしていますが、講師歴は6年ほどになります。職業訓練校の講師を経て、今はフリーランスとして独立し、レッスンを行っています。
──今はフリーランスとして活動されておられますが、インストラクターのお仕事をされるきっかけは何でしたか?
松本さん 元々はWEBデザイナーとして仕事をしており、コンピューターとは常に関わりがありました。
ずっと「教わる側」「使う側」だったのですが、「伝える」というデザイナーの経験が長かったこともあり、ある時に「自分も人に教えることができるんじゃないか?」と思ったのがきっかけでした。
職業訓練校の講師を経て、今は東京・銀座にある有料老人施設などで出張講座を行っています。
シニアの方が「主体的」になれるサービスが
今後重要になってくると思います。
──出張講座のお仕事についてお聞かせください。
松本さん そうですね。有料老人施設といいましたが、基本的にはマンションと同じように個人の部屋がそれぞれにあって、もしものとき用にケアの設備が付帯している仕組みになっています。
入居されている方と実際にお会いして感じるのが、今の70代、80代には元気な方が多く、何より気持ちの面でも若いということです!
新しいことにも非常に関心を持っておられますし、いつまでも変わらず元気に過ごしたいと考えておられる方がとても多いです。
また、引退後も会長職として仕事を続けておられる方、国内海外問わず旅行好きの方など、アクティブな方もたくさんいらっしゃいます。
──なお元気でケアもしっかりされているとなると、不安はあまりなさそうですね。
松本さん そうですね。生活面では施設がとてもしっかりしていますので、ほとんどといっていいほど、不安は感じておられないと思います。
ただ、それでも健康面の不安はどなたでもお持ちで、特に認知症に対する不安をお持ちの方が多いと感じます。
でも、どうしたらよいかということになると、その方法がわからないで、困っていらっしゃる。
施設側もそのようなニーズを汲み取って、レクリエーションの一環として認知症予防サービスを積極的に進めています。
──なるほど。確かに施設に入居していると、何でも周囲がやってくれるので、かえって認知症になりやすいといわれています。
松本さん そうですね。やはりシニアの方が「主体的」になれるサービスを提供することが今後重要になってくると思います。
やっぱり”上げ膳据え膳”では、何もしなくても楽な分、脳も身体も衰えてきてしまいますよね。
──その通りですよね。今施設内で「認知症予防講座」※1を開講されていますが、その手ごたえはいかがですか?
松本さん 今までもマンツーマンでパソコンの出張講座をしていたのですが、パソコンやタブレットを学ぶ「ICT講座」としては、初めて認知症予防をうたったこともあり、反響が大きかったですね。
利用者のためになるからと、施設のほうも告知にとても協力的だったことも反響の大きさにつながったと思います。
※1 株式会社ウォンツ・ジャパン開発「脳×元気®」プログラム
iPad×認知症予防講座の講師として、
毎日奮闘しています!
──「新しいことを学ぶ」「みんなでわいわいと取り組む」ことが認知症予防につながるというコンセプトの講座ですよね。
松本さん そうなんです。それこそ、皆さんiPadやiPhoneといったはじめてのものにも、とても興味をお持ちです。
それをみんなでわいわいしながら授業をしますので、どなたも楽しんでおられます。
講座では、インターネット、地図や乗り換え案内、写真、音楽など、さまざまなことをやっています。
息子さんやお孫さんとのやりとりもスマホに代えることで、写真を送ってもらったり、テレビ電話をしたりなど、さらにコミュニケーションが増えた方もいらっしゃいます。
また、ちょっとしたお出かけ気分ですが、講師として一緒にお店までiPadを買いに行くこともありますよ! 毎日、奮闘しています!
──「なるほど。とても素晴らしいです!
iPadを使った講座では笑顔が欠かせません。
広々とした多目的スペースの中、1クラス6名ほどの少人数でレッスンが行われます。
2. 資格を取得して良かったこと
──取得された資格をお仕事でどのようにいかしておられますか?
松本さん 一番大切なことなのですが、認知症の知識を得られたことが良かったですね。
今まで認知症という言葉はよく聞いていたけれども、正しい知識を持ち合わせてはいなかったのです。
2016年夏に認知症予防活動支援士の講座を受講し、認知症を専門の先生から直接学べたことはとても勉強になりました。
──なるほど。ありがとうございます。
松本さん 特にMCI(軽度認知障害)の段階であれば、一部には正常に戻るケースがあるという研究が非常に興味深いですよね。
講座中にも必ずMCIのお話をして、この時期に頭を使うことがとても大事ですとお伝えすると、皆さん納得されます。
認知症予防の知識を持っていることで、講座に価値付けができています。
「資格を持っている」ことが、
受講生の安心感につながる。
──認知症予防活動支援士を取得されたことで一番よかったことは何でしょうか。
松本さん やはり「資格」ということですね。それこそ日々実感しているのですが、講師が資格を持っていることで、講座の価値が上がっています。
ただ勉強していますと伝えるより、資格として担保されたものをお見せするほうが、安心感につながっています。
講座の価値が伝えやすくなり、勉強して資格を取得したのはよかったと思います。
3. 認知症予防活動支援士を目指される方へのメッセージ
現場で体験してほしい。
それが「真」の認知症予防活動支援士への
一歩だと思います。
──認知症予防活動支援士を目指す方にメッセージをお願いできますか。
松本さん 若い方にはなかなか難しいかもしれないですけど、私ぐらいの年齢になってくると、認知症を意識しないではいられなくなります。
今は30代、40代の方でも、シニア世代の認知症を他人事ではなく、自分事として考えられるようになると、また見方も変わってくると思います。
私なんかはそんなに遠い先の話ではないのですが(笑)
また、現場で実際にシニア世代の方と接することも大切だと思います。
「伝える」という動作一つとっても、ゆっくり丁寧に何度も繰り返し伝えることが必要です。
最初は「どうして?」と思うことも多いでしょうが、勉強したり、現場で経験を積んだりすると、「どうして?」ではなく「当たり前」なんだなと思えるようになります。
特に認知症予防活動支援士は、資格として持っているだけではなくて、シニア世代に接してこそ、より一層資格がいきてくると思いますね。
私も学んだ知識を日々講座に取り入れるつもりで頑張っています。
知識だけではなく、是非とも現場で体験してほしい、それをもって「真」の認知症予防活動支援士になると思います。
なんだか最後に偉そうなことを言ってすみません(笑)
──いえいえ、とんでもないです(笑) 本日は貴重な話をお聞かせいただき、ありがとうございました。