糖質制限、糖質オフと認知症予防を解説します。

認知症の危険因子

認知症予防のための正しい糖質制限とは?!糖質そのものから解説します。

数年前からテレビやラジオで耳にしたり、スーパーでも多くの表示を目にする「糖質オフ」ですが、糖質オフとはどう健康とつながるのでしょうか?

糖質とは?

「五大栄養素」は何かお分かりでしょうか?

炭水化物、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンです。

このうち炭水化物は食物繊維と、分解・吸収されてエネルギー源となる糖質に分けられます。

炭水化物の中でも食物繊維は糖質と違って積極的に摂取するべきものとされています。

食物繊維はそもそも体内で吸収されないので、不要なものと考えられてきた歴史がありますが、近年では体内で大事な役割をすることがわかってきて、”第六の栄養素”ともいわれています。

食物繊維の役割については別記事で紹介するとして、

分解・吸収されるエネルギー源となる糖質には、2つの種類があります。

1つは、砂糖(ショ糖)、ブドウ糖、果糖のような1つ、あるいは2つの単糖がくっついただけのものと、

ご飯、麺類、芋類に多く含まれるデンプンのように、多くの単糖がくっついた多糖類というタイプの糖質です。

単糖も多糖類も、糖質としてのエネルギー量は同じですが、エネルギーとしての使われやすさには違いがあります。

体に入った糖質はどうなるか?

ご飯や麺類などの炭水化物を食べると、糖質はブドウ糖のような一番小さい単位の単糖まで分解され、小腸で吸収されます。

ちなみに炭水化物でも食物繊維は小さく分解されても単糖までには行かず、デキストリンというかたまりで止まってしまって、吸収されません。

健康食品で「難消化性デキストリン」というのは糖の吸収を邪魔する糖質のことです。

吸収されたブドウ糖は肝臓に送られ、一部は貯蔵に適したグリコーゲンという形で蓄えられ、余った分が血液に乗って全身に巡ります。

この血液中のブドウ糖を「血糖」といい、血糖値で測定する対象となります。

ブドウ糖は脳や筋肉でエネルギー源として使われたり、グリコーゲンとして筋肉に蓄えられたり、中性脂肪として脂肪組織に蓄えらます。

他の栄養素であるタンパク質や脂質もエネルギーとして使われますが、糖質がエネルギーとしては最も素早く使える形です。

低血糖が起こった場合は糖質の基本であるブドウ糖を食べる、勉強の集中力を上げるためにブドウ糖を食べる、それはブドウ糖の形が速攻でエネルギーになるからです。

余談ですが、最近懐かしい「ラムネ菓子」が注目を浴びていますが、ラムネ菓子はブドウ糖が多く含まれているので受験生や脳の疲労に最適なんです。

糖質を摂りすぎるとどうなるか?

糖質はエネルギーとして使いやすく、脂質に比べて健康にいいイメージもあるかと思いますが、糖質をとりすぎるとよくないことが起こることがわかっています。

中性脂肪が増えて「肥満」につながる

通常、空腹時や睡眠時は、

糖質はグリコーゲンの状態で肝臓に100%蓄えられ、肝臓から放出されるネルギー源としての糖質と全身で消費されている糖質の量はほぼ等しくなっています。

食事で糖質を摂ると、血糖値が上がっていきます。

そうすると、膵臓から血糖値を下げる唯一のホルモンである「インスリン」が分泌されます。

このインスリンの働きによって、血糖値を下げるために血液中のブドウ糖はまず肝臓に取り込まれ、血中にブドウ糖を流さないようにします。

(このとき、肝臓の機能が落ちていたり、脂肪肝だったりすると、十分量のブドウ糖が蓄えられないことはよくわかるかと思います。)

肝臓からブドウ糖が溢れてくると、さらに膵臓からインスリンが分泌されます。

そして筋肉や脂肪組織に蓄えられます。

身体中に十分量の活動できる筋肉があればそこでグリコーゲンとして蓄えられますが、筋肉量が足りない場合は脂肪組織に多く貯まることになります。

この時、よりエネルギーを貯蓄するのに適し、かつ、すぐには使える形ではない中性脂肪にして蓄えるのです。

つまり、糖質を摂りすぎると最終的にはすぐには消費されない中性脂肪の形で蓄えられ、体脂肪が増えるということになります。

「食後高血糖」の状態が全身の血管をボロボロにする

食事を摂ると、誰でも一時的に血糖値が上がります。

しかし、人によっては食後の血糖値の上がり方が急激な人がいます。

これを「食後高血糖」といいます。

主な原因はインスリンの分泌が不十分ということと、インスリンの効き目が弱いとうことといわれていますが、

普段から血糖値が上昇しやすい生活習慣を送っているとインスリンを働かせ過ぎて膵臓が疲弊することがわかっています。

血糖値が急激に上昇すると、血管はダメージを受けます。

そうすると、どんどんと動脈硬化が進んでいき、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性が高くなります。

また、食後高血糖の状態が長時間続くと、間違いなく糖尿病になっていきます。

血糖値を急に上げないようにするには?

食後高血糖を防ぐためには、

・栄養バランスの良い食事を食べる

・1日3食、規則正しく食べる

・食物繊維を多く摂る

・玄米や全粒粉のパンを食事に取り入れる

・炭水化物以外から食べ始める

・一気飲み一気食いはやめる

その他食後に腕の上げ下げ運動を5分間する、など体を動かしてブドウ糖を消費する方法もあります。

砂糖などが入った甘い食べ物は、食後すぐに分解・吸収されるので、血糖値はすぐに上がってしまいます。

食べ過ぎに注意しましょう。

食後にすごく眠くなる方は要注意ですのでまず食生活を見直しましょう。

糖質を完全にオフにするとどうなるか?

糖質は摂りすぎると体に良くないことはお分かりいただけたと思います。

近年ダイエットで話題になっている「糖質制限」ですが、

糖質の摂取量を減らすと、血糖値が上がりにくくなり、中性脂肪も溜まりにくく、メタボ予防や体重減少にもなると考えられます。

糖質からのエネルギーが使えなくなると、筋肉のグリコーゲンや脂肪組織に蓄えられている中性脂肪が使われるようになるので、ダイエット効果があるのは理解できる話です。

ただし、過度な糖質制限を行うと、脂肪から使える形のエネルギーを作るには時間がかかるので、逆に健康を損ねる事態になることがあります。

・栄養不足

糖質制限をしようとしてまず考えるが、主食であるご飯やパン、麺類を減らすことだと思いますが、そうなると何を食べていいかわからないという状態に陥る人がいます。

そのため、食事の全体量が減り、栄養不足になることがあります。

高齢者の場合の栄養不足は特に深刻で、エネルギーを作るために筋肉がどんどん減っていき、「サルコペニア」という状態になり、身体機能があっという間に衰える事態に発展し兼ねません。

・低血糖

糖尿病があり、薬物治療を行なっている人は、食事からの糖質摂取量を減らすと、血糖値がぐっと下がってしまって低血糖症状を起こすことがあります。

実はこの低血糖症状は認知症のリスクをかなり上げることが知られています。

糖尿病が認知症のリスクであることは周知の事実ですが、

糖尿病患者さんの中でも、低血糖症状を多く経験された方は特に認知症になる危険性が高いことがわかっています。

年齢が上がるに連れて低血糖と認知機能の低下の関係が密接になっていくので、より厳格なコントロールが必要になります。

糖尿病の薬を飲んでいる方は、過度な糖質制限によって低血糖症状を起こさないように注意が必要です。

低血糖症状を起こした場合は速やかにブドウ糖を補給して脳を守る必要があります。

ちなみにブドウ糖は薬局で無料でもらえる場合が多いので必要な方は相談して見てください。

結局糖質制限は良いのか?悪いのか?

最終的には糖質もバランスが大事だ、ということになりますが、

アメリカの研究でおもしろい結果が出ています。

約15000人について炭水化物の割合と死亡率の関係を調べた結果ですが、

摂取エネルギー量全体に占める炭水化物の割合が40%未満の「過度の糖質制限食」でも、炭水化物の割合が70%以上の「高糖質食」でも、死亡率高くなっていました。

死亡率が最も低かったのは、炭水化物の割合が50~55%の場合だということがわかりました。

日本人に一概に当てはまるわけではないですが、目安として炭水化物から摂取するエネルギーの割合としては50~60%ぐらいに設定するのがいいでしょう。

糖質からのエネルギー摂取割合50%とは?

摂取エネルギー割合が50%というと、半分が糖質なのでかなり多いようなイメージを持ちますが、

実はそうでもありません。

農林水産省によると、成人女性で必要な1日のエネルギー量は、1400~2000kcal、男性は2200±200kcal程度が目安になります。

そうなると、約1000kcal強を糖質から摂ることになりますが、

これは、ご飯で換算すると600gほど、茶碗4杯分ほどになります。

食パンだと5枚ほどです。かけうどんだと3杯くらい。

これだと多く感じますが、これにケーキやジュースを飲むとご飯は茶碗1杯分、パンは1.5枚分減っていきます。

芋類にも糖質が多いため、おかずにも糖質は含まれています。

それらを加味すつると、主食の量としてはご飯だと毎食茶碗1杯弱、パンは毎食1枚ほどが適性だと考えられます。

食べ過ぎず食べなさすぎず、糖質以外のタンパク質から多くエネルギーを摂ることを頭に置いて、バランスのよい食事を心がけましょう。


今回は糖質について紹介しました。

現代の日本人の食事は、糖質と脂質が多く、タンパク質が少ない食生活になっています。

参考にしてみてください。

認知症予防にはバランスの良い食事も大事ですが、脳に適切な栄養を与えたり、ダメージから守ることも大切です。

それは薬ではなく自然にある食物から栄養素を摂るのが最善です。

ぜひ読んでみてください。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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