2017年の国際アルツハイマー病会議(AAIC)で、権威ある論文で有名なランセット国際委員が、
「認知症の症例の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因する」
と発表しました。
認知症協会でも何度も認知症発症リスクとして紹介している、
「糖尿病」、「高血圧」、「肥満」等の生活習慣病とともに、
「難聴」
も9つの危険因子の一つに挙げられました。
さらに興味深いのは、
「予防できる要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」
という指摘がなされたという点です。
もちろん先天性の難聴や、特殊な難聴は不可避なものもありますが、まずは難聴、特に今回は加齢性難聴について認知症との関連を含めて紹介します。
難聴は認知症の発症を加速させる?!
最近の研究で、難聴になると、
音の刺激を通して脳に伝わる情報量が少なくなり、音の刺激に反応する脳の活動分野が狭くなり、
神経細胞の衰退や、脳の萎縮が起こり、結果認知症の発症に影響することがわかってきました。
加齢とともに聴力は低下しますが、できる限り聴力を保持し、低下したら補うようにするべきでしょう。
まずは耳が聞こえる仕組みから紹介します。
「聞こえる」ための耳の仕組み
音は空気の振動として送られている、というのは聞いたことはあるでしょう。
なので真空では音は聞こえません。
音が空気を振動させ、耳の中の鼓膜に伝わります。
鼓膜が振動し、耳小骨という小さな骨によって増幅され、その奥にある蝸牛という部分に伝わります。
蝸牛の内側には、有毛細胞といわれる感覚毛を持つ細胞が並んでいます。
有毛細胞は、片方の耳の中に約15,000個あるそうです。
蝸牛に音が伝わると有毛細胞の感覚毛が揺れ、有毛細胞の活性化が起こり、それが電気的な刺激に変換され、聴神経に伝わります。
その刺激が脳に届くことによって、音が聞こえる、という状態になります。
つまり、この有毛細胞の感覚毛が取れたり、有毛細胞そのものが減ると、聴力が低下するという仕組みです。
加齢性難聴とは有毛細胞が壊れること
有毛細胞は加齢によって壊れて減っていきます。
実は有毛細胞の減少は30代から少しずつ進行していきます。
そして会話がしづらく、コミュニケーションに支障を来すようになるのが加齢性難聴です。
65歳を過ぎると3人に1人が、75歳以上では7割以上の人が加齢性難聴であるといわれています。
有毛細胞が減るのは老化現象の1つで、白髪やシワやシミのようにこれ自体を完全に避けることはできません。
しかし、進行を抑えることは可能です。
というと、なんだか認知症予防と同じような言い方になってきましたね。
では、加齢性難聴を悪化させる原因について考察します。
加齢性難聴を加速させる危険因子は?!
加齢性難聴に最も大きな影響を及ぼしているのは騒音と言われています。
日常的に大きな騒音にさらされる環境で仕事をしたり、住宅を構えることで、有毛細胞が痛むといわれています。
騒音の次に影響するのは、やはり生活習慣ですが、実は医師の中には、老人性難聴は老化ではなく、生活習慣病の1つだと主張する人もいます。
音を聞くのも有毛細胞という細胞の力を使っています。そしてその細胞に栄養を送るのは血液です。
生活習慣の乱れで血液の流れが悪くなったり、血管が硬くなったり傷んだりすると、有毛細胞が減るのです。
体に起こる全ては細胞が、いかに元気でいるかに左右されていきます。
細胞にストレスを与えず、細胞がうまく働くために、しっかりと栄養を与えることが大切です。
他の原因としては、内臓疾患や自律神経の乱れによって耳の聞こえも悪くなるということがありますが、これらも生活習慣を見直せば改善するものです。
なかなか自分の生活習慣を客観的に見える人は少ないですが、
もっと健康になれそうかどうか?
と考えてみてください。
まだ健康になれそうだという人は、改善の余地ありですね。
加齢性難聴の特徴、高い音聞こえてますか?
加齢性難聴は徐々に進行していきます。
まず小さい音が聞き取れなくなり、徐々に大きな音も聞こえにくくなります。
慶應義塾大学教授の小川郁先生の著書に、難聴レベルをチェックできる目安がありますので、参照させていただきます。
●あなたの難聴レベルは?!
軽度・・・木の葉のそよぎが聞こえない
中等度・・目の前の会話の声が聞こえない
高度・・・ピアノの音が聞こえない
重度・・・車のクラクションが聞こえない
いかがでしたでしょうか?
また、加齢性難聴の特徴としては、周波数の高い音から聞こえにくくなる傾向があります。
電子機械音等は、人の声よりも周波数が高いですが、会話でも子音が周波数が高く、子音が聞き取りにくくなります。
「加藤さん」と「佐藤さん」が聞き分けにくい、というようなことが起こtたりします。
難聴と認知症の関係は?!
加齢性難聴がそのまま進行していくと、コミュニケーションをはじめとして様々な問題が生じます。
最近注目されているのが、やはり認知症なのです。
2015年に発表されたAmievaらの研究論文でこんな結果が出ています。
65歳以上の人を対象に、「難聴がないグループ」「難聴があり、補聴器を使うグループ」「難聴があり補聴器を使わないグループ」の3つのグループについてその後を長期間追跡調査した結果、
難聴がない人に比べ、難聴があるのに補聴器を使わなかった人は、認知機能が低下する傾向が見られた。
補聴器を使った人の認知機能は、難聴がない人と大きな差はなかった。
つまり、単純に耳からの情報が乏しいと、認知機能が衰えるのも早いということです。
その他にも、難聴のためにコミュニケーションがうまくいかなくるケースが多くなります。
そうすると、だんだんと人との会話を避けるようになってしまいます。
そこから次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。
この孤独感やストレスも認知症の危険因子に十分になり得ます。
五感の中で聴力は一番衰えたときに生活に支障が大きく、衰えた時のストレスも強いものです。
日本耳鼻咽喉科学会によると、「認知症は、難聴が最も大きな危険因子」だと言われている理由はこれらにあります。
加齢性難聴の治療は?!
加齢性難聴は老化、もしくは乱れた生活習慣を長い間送った結果であるので、根本的な治療法はありません。
これも認知症の考え方と似ています。
ただ、難聴の場合は、耳が聞こえにくいことで生活に支障を来した時点で、補聴器を使う、という手段があります。
足りない聴力を補うだけで、生活の質は格段にアップします
補聴器の使用に関して耳鼻科の先生と相談し、補聴器を使ったリハビリを行い、半年ほど使用して脳がなれて快適になるとされていますので、
まずは相談してみましょう。
ただし、基本は耳の聞こえが正常なうちから、生活習慣に気をつけて健康的でストレスのない毎日を送ることです。
今回は特に加齢性難聴について紹介しました。
加齢性難聴とは老化によってある程度有毛細胞の劣化、脱落は仕方ないものの、生活習慣によって改善、予防できるという可能性があります。
五感、感覚の低下は受け入れ難く、自分の中の焦りやストレスが認知症等の他の病気を呼び込むことがあります。
今を自信を持って健康に生活できれば未来への考え方も変わるのではないかと思います。
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