認知症は遺伝するのか?認知症予防研究協会

認知症の危険因子 認知症予防法

家族性高コレステロール血症とは?認知症が間接的に遺伝する理由の一つ

認知症には大きく4つのタイプがあります。

認知症には大きく分けて4つの種類があります。

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

です。

残念ながら現時点では、認知症と診断されてしまったら完治させることはできません。萎縮した脳は元に戻ることはありません。

認知症にならないためには、認知症のタネが育つ40代から、しっかりと予防、対策をすることが大切なのです。

認知症が遺伝する可能性はなきにしもあらず

認知症は遺伝するのでしょうか?

現在では、認知症は遺伝性疾患ではないとされています。

しかしながら、認知症は糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病があると発症しやすいことは周知の事実です。

遺伝子には免れない認知症の発症が刻まれていないにしろ、家族皆同じ生活習慣を続け同じ生活習慣病になれば、認知症の発症の危険性は同じだけ高くなります。

そういう意味では、間接的な遺伝性疾患と考えることができます。

さらに言えば、遺伝する認知症リスクもあります。

有名なものが家族性高コレステロール血症です。

脂質異常症の多くは生活習慣病ですが、家族性高コレステロール血症は遺伝的な要因によって悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値が異常に高くなる病気です。

今回はこの家族性高コレステロール血症について紹介します。

家族性高コレステロール血症とは?

繰り返しになりますが、家族性高コレステロール血症は、遺伝的要因の病気ですので、生活習慣に関係なく発症します。

高コレステロール血症になると、LDL(low-density lipoprotein cholesterol)というコレステロールを含む粒子が増えていきます。

LDLの役割は、全身の細胞にコレステロールを運ぶことですが、通常LDLは細胞の表面にあるLDL受容体に結合して細胞内に入っていきます。

ところが家族性高コレステロール血症のある人は、LDL受容体に関わる遺伝子に変異が起きているため、LDLが細胞内に取り込められず、血液中にLDLが増えることになります。

血液中で増えたLDLは、酸化し、血管壁に入り込むことで動脈硬化を引き起こします。

家族性高コレステロール血症の危険性

家族性高コレステロール血症は遺伝的な要因で発症しますので、父親か母親のどちらかがその遺伝子を持っていると、50%の確率で遺伝します。(ヘテロ遺伝子の場合)

生まれる子供は、胎児のときからLDLコレステロールが異常に高くなります。そうすると、男性では20歳代から、女性では30歳代から、狭心症や心筋梗塞を発症する人もいます。

これは、遺伝子に変異がない人より15年から20年ほど早く、そして加齢に伴って急激に発症率が高まることがわかっています。

最終的には家族性高コレステロール血症の方の30%以上が狭心症や心筋梗塞を発症すると言われています。

家族性高コレステロール血症の診断基準

家族性高コレステロール血症の診断基準は、次の3つの診断基準のうち、2つ以上に当てはまると診断されます。

  1. LDLコレステロール値が180mg/dL以上
  2. 2親等以内の家族が家族性高コレステロール血症か、男性の場合55歳未満、女性の場合65歳未満で狭心症か心筋梗塞を発症しているか
  3. 黄色腫がある

3つ目の黄色腫(おうしょくしゅ)ですが、コレステロールが皮膚の下にたまることでできる膨らみのことをいいます。

黄色腫の出来やすい部位はアキレス腱で、患者さんの8割がアキレス腱が両脚とも太くなり、足首が寸胴になっていることが観察されます。

アキレス腱にはコレステロールがたまりやすく、家族性高コレステロール血症ではなくても、アキレス腱の太さ(つまんで一番狭いところ)が1.5センチ以上の人は過剰な血中コレステロールがたまっている可能性が高いといわれています。

他にも、目のふちや手の甲、肘や膝の表側にも黄色腫ができます。

黒目の周囲に「角膜輪」という白い輪ができることもあります。

家族性高コレステロール血症の治療

家族性コレステロール血症は、遺伝子的にすでに異常なコレステロール値ですので、治療は薬物治療を中心に行います。

目標はLDLコレステロールを100mg/dL未満まで下げることになります。

高コレステロール血症の薬は現在作用の違う様々な種類のものが出ています。医師と相談しながら最適な薬を1種類から数種類併用して治療していきます。

もちろん生活改善も行います。

家族性高コレステロール血症は生活習慣関係なしに発症しますが、そこさらに食べ過ぎ、運動不足、肥満が重なると、さらにLDLコレステロール値が上がります。

食事では動物性脂肪やコレステロールを制限し、動脈硬化を進行させる喫煙等の習慣はご法度になります。

診断されたら早急に治療を始め、狭心症や心筋梗塞のリスクを下げ、脳血管性認知症のリスクを下げましょう。


今回は家族性高コレステロール血症という少し特殊な疾患を取り上げました。

生活習慣病はどれも認知症のリスクを高めます。

認知症予防の基本は生活習慣にあることはいうまでもありません。

それに加えて脳を保護し活性化する栄養素を補充して意識して認知症を予防することが大切です。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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