以前の歯周病は認知症の原因?!認知症予防になる歯周病ケアとは?
という記事では、歯周病と認知症の関係から、歯周病のケア、治療まで紹介しました。
今回は、その記事の中の歯周病チェックにもあった、”口臭”について考えてみようと思います。
認知症と口臭は関係あり?!口臭を防いで認知症予防
確かに介護施設でも、認知症の患者さんが症状が進行して行くと臭いも強くなっていく、という話をよく耳にします。
臭いと病気とは必ず関係はあると思います。
臭いと病気の関係
そもそも病気やある種の症状が出ると体臭が変化するというのはよくある話です。
有名なのは、
「糖尿病になるとバナナが腐ったような臭いがする」
というのがあります。
これを簡単に解説すると、糖尿病は、エネルギーである糖をうまく細胞に取り込めないような状態ですので、
中性脂肪から脂肪酸を分解して”ケトン体”をエネルギーとして使おうとしまが、
このケトン体がたくさん作られると、ときに汗に混じって臭いを出すのです。
過激な糖質制限ダイエットでも同じ状況になりますので、ダイエットで体が臭くなる、というのもあり得る話なんです。
他にも、胃が弱ると消化機能は低下し、腐敗臭がするようになります。
卵の腐ったような臭いが口から、体からしてきます。
東洋医学でいうところの、「口臭は胃熱による」にあたります。
さらに、「ノネナール」という物質が古本のような臭いを出す”加齢臭”があります。
この加齢臭は血中のコレステロールが多いと皮脂腺の脂肪の量も多くなり、加齢臭がきつくなる原因となることから、生活習慣病から来る臭いとして知られています。
このように、体から出る臭いは、何らかの異常事態であることが多く、
その大部分は生活習慣病による代謝異常からくるということが指摘されています。
生活習慣病は認知症の大敵ですので、それぞれについてまた細かく紹介して行きたいと思いますが、
今回は、
”口臭と認知症”について考えてみたいと思います。
認知症の患者さんの脳内で歯周病菌が発見された
という記事でも紹介しましたが、
歯周病菌とアルツハイマー型認知症の関係が注目を浴びています。
米ルイビン大学のヤン・ポテンパ博士らが出した論文で、
慢性歯周病菌の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌が口から脳内に移行し、それに伴ってアルツハイマー型認知症の原因の1つであるアミロイドβの蓄積も増加する、
という研究結果が発表されました。
歯周病菌がアミロイドβを増やすかどうかは今後の研究結果によりますが、
脳にダメージやストレスが加わって”ゴミ”が出る、というのはあり得る話かと思います。
歯周病は口臭を伴うことが多い
認知症予防はリスクの回避に他なりませんので、
歯周病菌を増やさないように日々のケアが大切になります。
厚生労働省が2016年に行った調査によると、20歳代から増えて来る歯周病罹患率ですが、
軽症の人を含めると、日本人の7割に歯周病の症状があると推定されているそうです。
55歳以上では5割以上ですので、かなりの人数です。
そんな歯周病ですが、基本的には歯に残った食べカスなどの汚れが原因ですので、それがずっと残ったままになっているということは、
当然腐敗していくと考えられます。
そうなると、何とも言えない不快な臭いがすることになります。
詳しくは後述しますが、口臭は歯周病が原因のことが多く、
歯周病は認知症を悪化させると考えられます。
それ以外にも人とのコミュニケーションにも気になる口臭なので、セルフケアを心がけたいですよね。
歯周病は認知症の原因?!認知症予防になる歯周病ケアとは? の記事の中にもある歯周病チェックの項目にも、
口臭を指摘された、もしくは自分で口臭があると感じる
というチェック項目がありました。
当然認知症が進行していくと、まず記憶より先に嗅覚が衰えますので、
自分の口臭には気づきません。
進行すると歯みがきをすることも忘れ、歯みがきの仕方も忘れていくので、
ますます状況は悪化します。
歯周病が進行していくことは、歯を失うことにもなり兼ねませんが、
少し話を大きくすると、東北大学の研究では、認知症の疑いのある人では健康な人に比べて40%歯が少ないという結果も出ています。
歯を大切にするためにも、歯周病と口臭のケアを日頃から気をつけて認知症予防に繋げましょう。
口臭の種類
では今回も最新の歯周病の見解として東京医科歯科大学名誉教授の和泉雄一先生の寄稿を教科書に口臭と認知症について考えてみたいと思います。
まず少し認知症とは離れた口臭の基礎知識ですが、面白いお話なので紹介します。
実は口臭には、真性口臭症、仮性口臭症、口臭恐怖症の3種類があるそうです。
●真性口臭症
明らかに口臭が認められるというタイプです。
朝起きた時やタバコ、病的な口臭をひっくるめた症状です。
治療が必要なのはこのタイプのみとされています。
●仮性口臭症
自分では口臭が気になるけど、周りが気にするほどではないというタイプです。
このタイプの方は、口臭測定器で数値化して安心してもらえれば、
気にならなくなる人がほとんどだそうです。
●口臭恐怖症
文字通り、周りの人が気になる口臭はないのに、自分が強く口臭がすると思いこみ他人に迷惑をかけていると思い悩んでいるタイプです。
仮性口臭症との違いは、検査して数値が低くてもそれでも気にしてしまうところです。
治療が必要なのは真性口臭症
先ほどの3つのタイプの中で治療が必要なのは病的な原因の真性口臭症、つまり何らかの疾患があり、明らかに自他ともに認める口臭がするとき、となっています。
明らかな疾患とは、
口腔内の汚れ、歯周病、進行した虫歯の他に、
副鼻腔炎や扁桃腺炎、呼吸器の病気や肝臓病、糖尿病があります。
口臭にはこうした病気も隠れていますので要チェックですね。
余談ですが私も誰かが風邪をひいたりひきかけていた時は、
「風邪の臭いがする。」
と言い当てるのが特技です。
口臭の検査とは?
口臭で悩んだらどの病院に行くか?
という話はありますが、ここでは認知症予防として歯周病を発見するためにも、
生活習慣病の持病がない限り歯科医院を一度受診してみましょう。
まずは、問診と口臭を調べる検査が行われます。
『口臭測定器』という機械があり、マウスピースを30秒ほど加えて口臭の原因となっている成分の濃度を測定します。
歯科医院全てに設置してあるわけではないので興味がある方は調べてみてください。
認知症に危険な口臭はどんな匂い?
口臭測定器では、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物(硫黄ガス)の成分を測定します。
口腔内の歯周病菌などの細菌は、新陳代謝で剥がれ落ちた細胞などを分解した時に、硫黄ガスを発生させます。
硫黄ガスといっても硫黄(元素記号はS)だけの成分が入っているわけではなく、
主に3種類の化合物が混じっています。
・卵の腐ったような臭いの硫化水素
・血生臭い臭いのメチルメルカプタン
・生ゴミのような臭いのジメチルサルファイド
これらが混じっていますので、まともに嗅ぐととても不快な臭いです。
こんな臭いがした場合は、歯周病菌が繁殖している可能性が高いので、
すでに脳内に歯周病菌が少なからず移行している可能性があります。
歯周病菌は脳内でアミロイドβを増やす可能性が示唆されていますので、
早急な対策が必要です。
ですが、和泉先生によるとセルフケアで口の中をしっかりとケアすれば、口臭はかなり軽減できる、ということです。
口臭予防のセルフケアとは?
口臭予防も歯周病や虫歯の予防も、基本は毎日の歯みがきとなります。
歯みがきの目的は、もちろん歯周病の原因でもある歯垢(プラーク)を取り除くことになります。
歯のゴミを取り除かないと結局最近は繁殖してしまうので、
タブレットやサプリのような口臭を爽やかな匂いに変える”だけ”のものは、
はっきり言って意味がありません。
臭いものに蓋をしているだけです。
ゴミを取り除いて細菌が繁殖しにくい口腔内環境にするべきなのです。
子供は口臭がほとんどありませんが、それは唾液がたくさん出るので食べカスや細菌をかなり洗い出しているからです。
年齢を重ねるに連れて唾液の量も少なくなりますし、
食べるものが柔らかいと唾液も出にくいですし、食べ物自体が細菌が繁殖しやすいものもあります。
認知症予防世代はやはり日々の歯みがきを徹底するのが大切になります。
それでは正しい歯みがきのポイントです。
●歯ブラシを選ぶポイント
歯ブラシの理想は、「歯ぐきを傷つけないもの」かつ「歯垢をしっかり落とせるもの」であり必要があります。
選ぶポイントは、
・歯ブラシの毛が密なもの
・毛の質感は普通、または柔らかめ
・歯ブラシのヘッドが小さいもの
だそうです。
毛が密な方が歯周ポケットにしっかり入り込み、汚れをかき出してくれます。
毛は硬いほど掻き出す力は強いですが、歯ぐきを傷つけることがあります。
そうなるとそこが炎症起こし、細菌が繁殖するきっかけになる可能性があるので特に歯をゴシゴシ磨く傾向にある男性は柔らかめがいいでしょう。
歯ブラシのヘッドは小さい方が奥まで届いて磨き残しを防げます。
●正しい歯みがきの仕方
小さい頃に歯みがきの仕方をどこかで習った微かな記憶がありますが、
認知症の原因になる可能性のある歯周病予防のためには今一度歯みがきの仕方を考える必要があります。
歯みがきの方法は歯の状態に合わせた2つの方法があるそうです。
いずれも力を入れずに鉛筆持ちで歯ブラシを持つのが力が入りすぎないポイントです。
・スクラッピング法
歯に対して外側は90度、内側は45度に当てて小刻みに動かす。
1箇所あたり、10〜20往復させる。
スクラッピング法は主に歯の表面を磨く方法で、歯が健康な人向きです。
歯ぐきを傷めず、磨き残しが少ないのが特徴です。
・バス法
外側も内側も歯ブラシを歯に対して45度の角度に当てて、毛先が歯と歯ぐきの境目に入るようにして小刻みに動かします。
1箇所あたり10〜20往復させます。
バス法は、主に歯ぐきや歯周ポケットのケアを目的とした方法です。
歯周病や虫歯がある人に向いています。
注意点は、歯ぐきを傷つけることがあるので、
2列植毛の歯ブラシを使うのがいいそうです。
歯医者さんに行くと丁寧に歯みがきをしてくれますが、とても柔らかく磨いていただけます。それほど力がいらないものなんだ、と考えさせられます。
●歯みがきで注意すること
歯みがきのタイミング
できれば毎食後にするのがいいそうです。
外出等で難しい場合は、起床時と寝る前にみがく習慣をつけましょう。
歯ブラシの交換のタイミング
歯ブラシは毛が命ですが、使い続けると毛が開いて磨けなくなります。
少なくとも1ヶ月に1回は換えましょう。
歯みがき粉の使い方
正しい磨き方ができるまで歯磨き粉は使わないように、ということです。
さっぱりした感覚が磨き残しを招くということです。
泡の立ちにくいものの方がしっかり磨けるかもしれませんね。
歯ブラシ以外を使う
歯間ブラシは必ず使うべきです。
歯のつまりはそれだけ細菌の住処を作ることになります。
電動歯ブラシを使うのもいいでしょう。
入れ歯の方は、入れ歯の洗浄が不十分だと細菌を口に入れることになりますので、しっかり洗浄してください。
歯みがき以外の口臭ケア
細菌は歯周ポケットのみで発生するわけではありません。
舌に付着した舌苔(ぜったい)と呼ばれる汚れを取り除くこのも効果的です。
1日1回、朝の歯みがきの後に舌磨き用の器具で優しく取り除くのがおすすめです。
また、口臭は口が乾燥しても発生しやすくなります。
年齢が重なるに連れて、唾液の分泌が減少します。
唾液を出す方法としては、
3本の指で耳の下を軽く揉みほぐす、という方法があります。
そのほかよく噛んで食べることも大切です。
歯科医院には定期的に行くようにしましょう。
歯周病はもちろん保険診療です。
健康な歯をお持ちでも自費にはなりますが、半年に1回はクリーンングに行くのが良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
確かにイメージ的には、高齢になると入れ歯をしたり、唾液が少なくなったりと
口臭は仕方ない、という方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、しっかりとケアをすれば、大部分が口臭は抑えられるという事実と、
口臭を放っておくと、自分自身口臭に気がつかなくなること、
認知症の原因になる可能性のある歯周病菌がどんどん繁殖することは
なんとなくでもお分かりいただけたのではないでしょうか。
早いうちから健康な生活習慣を心がけるのが何よりの認知症予防だと考えます。