高齢になるほど幸福度が増すエイジングパラドクス。認知症予防研究協会では認知症の方でも幸福度が増すと考えています。

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長生きはするほど幸福度が増す?!「エイジングパラドックス」とは?

今回は、高齢者の幸福感を研究されている大阪大学の権藤恭之准教授のお話を紹介したいと思います。

認知症協会では、できる限り認知症にならないための早期予防の方法を紹介しているわけですが、

情報が多ければ多いほど、逆に将来避けられない認知症への恐怖感が出てくる方も多いことでしょう。

ただ、実はどうやら人は長生きをすればするほど幸福度が増す、ということらしいのです。

そしてこの長生きによって得られる幸福感は、例え認知症であったとしても、軽度の認知症であれば十分に幸福感を得られる可能性があるのです。

幸福度が増すパターンを知ることは、今現在から、思考の流れを認知症への恐怖から遠ざけて、予防効果のあるレジリエンスを刺激することにつながると考えられます。

高齢者が幸福感を得る3つのパターンとは?

加齢とともに身体的に衰えるのは仕方のないことですが、今までできていたことができなくなるという感覚は、自分の人生に対して大きく失望するきっかけとなります。

しかし権藤先生によると、そこからさらに年齢を重ねていくと、そうした失望とは真逆の幸福感を得られることがわかってきたということです。

100歳を超えて幸せな理由

・権藤先生が100歳以上の”百長寿”を訪ねて、認知機能の調査研究をしていたとき108歳の女性に「幸せですか?」と聞いたところ、

即答で「幸せです」と返答されたそうです。

その女性は入退院を繰り返すほど体は弱っていたのですが、

「退院できたことでなく、生きていることが幸せ」と仰ったということです。

・脳梗塞で娘さんから介護を受けている105歳の女性は、

「生きていたら体は不自由でも娘の話し相手になれるから」

と前向きな生きる意味を見出していたということです。

上記の2人とも100歳を超えていますが、生きていること自体に喜びを感じることと、誰かの役に立っていることで幸せを感じるというパターンが見えてきました。

私自身まだ未熟ですので、体が不自由であれば周りに迷惑をかけたくない、という思いから、幸せに生きるイメージが浮かばなかったのですが、

体の不自由は関係なく、平均寿命を超えた超寿命の域には、その時しか感じ得ない幸福感があるのだと確信できるエピソードでした。

そしてこの幸福感はきっと、認知症がある程度進んでいても感じることができる感覚であると考えています。

認知症の方が多い老人ホームなどの施設を訪ねると、患者さん同士のコミュニティの中で、個人の得意なことをうまく引き出していることがあります。

軽度の認知症では、若いころに得意だったり覚えていたこと、例えば着物の着付けや、習字、絵画や歌などは失われていないことがほとんどなので、

施設のみんなから着付けを頼まれたり”のし書き”を頼まれたり、

誰かの役に立って作業することに笑顔で取り組まれている場面がありました。

私の祖母もそうでしたが、自分が誰かに頼られている時、役に立っていると感じる時、体の不自由よりも今生きていること自体が幸福に感じている、そういう印象を持ちました。

そしてそういう体験や感覚は、認知症の進行をぐっと遅らせていると考えています。

自由度は減るのに幸福感が高まる「エイジングパラドクス」

権藤先生の調査によると、70歳前後、80歳前後、90歳前後の合計2250人を2010年から3年に渡って調査したところ、加齢に伴ってポジティブな感情が増し、ネガティブな感情が減っていることがわかったそうです。

基礎体力や栄養状態は低下しているにも関わらず、幸福度が増すこの現象は、「エイジングパラドックス」と言われ、海外の研究でも報告されているそうです。

このエイジングパラドックスがなぜ起こるのか?

どのようにしてエイジングパラドックスが起こるのか?

様々な国で研究されています。

幸福のエイジングパラドックスを起こす3つのパターンとは?

現在考えられている考え方は主に3つあります。

  1. 状況に応じた「目標の調整・選択」行い、効率的にこなせるような「最適化」を図り、他者の助けを借りる「補償」を行うパターン
  2. 意識的に現状を「これでいいのだ」と肯定的に捉えて納得するパターン
  3. つらいことより楽しいことに目を向けて、心が安定する方向に変化するパターン

1のパターンでは、機能喪失による影響を最小限に抑えているパターンといえます。歩くのがしんどくなっても、今まで行っていたスーパーを変えて、薬をドラッグストアにもらいに行くついでに買い物をするとか、

活動できるように積極的に昼寝をするような態度です。

できなくなった自分を悲観せずに助けを借りても代替案を出して円滑に生活するような前向きなパターンです。

2のパターンは、いろいろなこだわり取っ払って「今が一番いい」と考えることができている状態です。

なかなか頭でわかっていても心が抵抗しそうですが、1のパターンの時よりもさらに身体機能が衰えると幸福度を増すためにこの思考の流れになるようです。

3のパターンは、さらに年齢を重ねると現れるパターンです。

例えば寝たきりになっても、楽しかった思い出に浸ったり、今がつらい状況でも、それは自然のことだと気持ちが適応できる状態です。

3つ目のパターンは、「老年的超越」と呼ばれています。

この老年的超越は、高齢期のおける心の発達過程と考えれているそうです。

幸福度が高くなって行く人は、上記の3パターンが努力ではなく無意識にできていくということです。

若かったころの自分のイメージにしがみつこうとすると、幸福度は下がっていくでしょう。


認知症でも軽度なら寿命は全うされる

認知症と寿命は正確な関係性は議論の域を超えませんが、

私の祖母の場合、80歳で認知症と診断されましたが、15年以上元気に過ごしていました。

認知症は本人の意思や考え方で、予後が大いに左右される病気だと考えれらますので、認知症になったら寿命が縮んでしまう、と考えるのは適切ではないでしょう。

超高齢化社会のその先へ行こうとしている日本ですが、健康寿命はそこそこに、平均寿命はまだ伸びるでしょう。

しかしながら今では味わうことがない晩年の幸福感も確かにありそうです。

認知症をはじめとする様々な困難が降り注いでも、命ある限り幸せに暮らしたいものですね。

そのために、予防ができる病気は予防すべきです。


認知症協会では、様々な知識を発信していきます。

認知症の要因は知能の低下だけではないので、知識だけあっても認知症の発症は防ぐことができないかもしれませんが、

少なくとも積極的に知識を得ようとする姿勢は、認知症予防につながると言えるでしょう。

認知症は予防がすべての病気です。

いいと思ったことは1つでも多く取り入れた方がいいでしょう。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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