若年性認知症とは?あなたが診断されたらどうするべきか紹介します。

認知症の基礎知識

若年性認知症を知ろう!もしあなたが認知症と診断されたら?

認知症、特にアルツハイマー型認知症は、年齢とともに脳も萎縮していき機能も衰えますので、当然患者数も増えていきます。

ですから将来的に認知症にならないように、先延ばしできるように予防法を紹介しているわけですが、

実は認知症は高齢者だけの病気ではありません。

10代だって50代だって認知症の症状が出ることがあります。

それが「若年性認知症」です。

今回は、日本で唯一の若年性アルツハイマー病専門外来と若年性認知症のための週末検査入院を行なっている、

順天堂大学医学部附属順天堂医院メンタルクリニックの新井平伊先生の著書を教科書に、若年性認知症の解説と、診断されてからの生活の仕方について紹介します。

若年性認知症と診断されたらどうするべきでしょうか?

若年性認知症は、働き盛り世代に発症することが多く、仕事でも家庭でも、高齢者とはまた違った問題が重なって来ることが多い疾患です。

自分自身も周囲の方も、理解も含めて適切に対応しなければ、進行も早くなったり、うつ病様症状も出現することもあります。

 

若年性認知症と診断されればショックも大きく、働き盛りゆえに経済的打撃も大きいです。

専門の支援サービスも少ないために、あらかじめある程度の知識を持つことが大切です。

 

若年性認知症とは?

若年性認知症とは、”65歳未満で発症した認知症”のことを言います。

65歳未満ですので、60代で発症するケースもあれば、10代で発症するケースもあります。

若年性認知症の平均発症年齢は51歳だそうですので、まさに働き盛り世代に発症します。

厚生労働省の調査によると、若年性認知症の患者さんは全国で推定約3.8万人ほど、女性より男性が多いということです。

若年性認知症の原因は?

認知症全体で見ると、その原因の第一位は認知症の4種類のうちのアルツハイマー型認知症ですが、

若年性認知症の場合は、脳卒中の後に起こる血管性認知症が最も多く、若年性認知症の原因の約40%を占める、ということです。

2番目にアルツハイマー型認知症、その次に交通事故等が原因で起こる頭部外傷後遺症約8%、前頭側頭型認知症の約4%となります。

1番の原因の血管性認知症は、脳卒中の後に起こることが多いですが、

脳卒中自体、日本人の死因第3位の疾患で、脳の血管のトラブルで起こります。

詳しくは別に記事にしますが、脳卒中も生活習慣と関係があり、予防が大事になりますので若年性認知症においても日々の生活習慣を見直して予防を心がけたほうが良いことになります。

驚くべきことは、2番目の原因がアルツハイマー型認知症だということです。

交通事故による後遺症としての認知症が多そうですが、

実はアルツハイマーがそれより多く、平均発症年齢が51歳ということを考えれば、異常たんぱくの脳内での蓄積がいかに早く始まっているか考えさせられます。

若年性認知症は見過ごすことが多い

若年性認知症は、患者さんがまだ若い自分が認知症だとは思わないことが多いので、発見が遅れることが多いです。

周囲の方も若いと認知症は疑わないので、疲れているのかな?程度の反応のことがほとんどです。

しかしながら若年性認知症は、早期発見・早期治療が重要です。

まず自分が「何かおかしい?」とか、仕事で単純ミスを繰り返す、

昨日のことがよく思い出せない。さっきまでできたことができなくなる等が気になってきたら、

念のため早めに専門医を受診することをおすすめします。

ただし、医療機関でも、なかなか若年性認知症だと診断されるケースは稀で、

更年期障害やうつ病と診断されることもありますので、

疑われる場合は、物忘れ外来や、認知症疾患医療センター等を受診してください。

受診の際は、本人だけでなく、家族も同行して説明を聞くのが望ましいでしょう。

若年性認知症の症状の現れ方

一般的に多いアルツハイマー型認知症の場合は、症状はゆっくりと進行していきますが、

若年性認知症の場合は、比較的早くに症状がまとめて現れてきます。 

●行動・心理症状(BPSD)が早く現れる

認知症の進行に伴って起こる様々な症状のことを、「行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。

若年性認知症の場合は、高齢者の認知症よりBPSDが早く現れる、という特徴があります。

 

若年性認知症が発症する平均51歳の世代は、仕事や家事、子育て真っ只中のケースが多いです。

うまくいかないことが多いと、

「あれ?おかしいな?」

と思うことが増え、ミスに過敏になっていきます。

それでもうまくいかないと、イライラしたら、不安になったり、落ち込んだりします。

それがどんどんエスカレートしていくと、うつ症状や興奮、妄想、攻撃的になって周囲に迷惑がかかるといったBPSDが現れてきます。

 

あなたが患者自身の場合、現実は簡単には受け入れられない場合がほとんどです。

しかし適切な治療を受ければ進行を遅らせることも可能ですし、

寿命には直接関係しません。

長い目で見て、ゆっくり時間をかけてその時にできることをやり、自分の価値を大切にすることが重要です。

あなたは何歳になってもあなたになれるのは世界でただ一人あなただけです。

 

周囲の態度として重要なのは、”本人が安心できるかどうか”だと言われています。

本人はすぐには受け入れられない場合がほとんどなので、周囲の方も時間をかけてゆっくりと接するようにします。

周りの人の態度が穏やかであると、BPSDも起こりにくくなります。

若年性認知症と診断された後の仕事は?

若年性認知症と診断された後は、なかなか現実を受け入れられず、自暴自棄になる可能性もありますが、

早期発見できれば進行を遅らせることもできますし、

基本的には経済的な面でもできるだけ仕事を続けることが推奨されています。

同じ仕事が難しい場合は、配置転換などの相談もしてみましょう。

 

退職せざるを得ないケースもありますが、

その場合は企業の障害者雇用枠を利用したり、ハローワークで再就職のためのトレーニングを受けながら働く機会を見つける方法もあります。

 

仕事を続けることが難しくなった場合は、障害年金などの経済的支援を早めに受けることが重要です。

認知症疾患医療センターや地域包括支援センターで相談できます。

 

若年性認知症は男性に多いですが、男性は特に仕事を辞めると生きがいを失うということが起こってきます。

そうした方に仕事の次に勧められるのが”ボランティア活動”です。

内容はどういったものでも問題ありません。

人の役に立っているという実感が、病気の進行そのものを遅らせる効果もあると考えられています。

若年性認知症と診断された後の生活は?

40歳以上で若年性認知症のある人は、介護保険による各種サービスを受けられまが、

若い人向けのサービスはまだまだ少ないようです。

じっくりとどのような事業所があるか下調べをする必要がありますが、

そんな時こそ地域支援包括センターに問い合わせてください。

認知症の進行を抑えるために

認知症の進行を抑えるためには、”脳の機能、体力、気持ち”の3つの健康を保つことが必要です。

脳の機能も体力も使うことが大事です。

そしてやりがいを見つけて気持ちを充実させます。

 


若年性認知症も高齢者認知症も予防は同じ

いかがでしたでしょうか?

若年性認知症は数は少ないですが、いつどのような状況で誰が発症するかわかりません。

誰にでも起こり得るということで紹介しました。

若年性認知症は事故の外傷の後遺症でも起こりますので、

日常生活は事故に注意することはもちろんですが、

やはり脳卒中やアルツハイマー型認知症も若年性認知症の原因としてありますので、予防的な生活は重要となります。

大事なのは脳に刺激を与え、栄養を与え、無理をせず使うことです。

認知症協会では、40代からの予防を強く勧めています。

是非知識として役立ててください。

無料の書籍も是非読んでみてください。


  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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