食後高脂血症は認知症のリスク。認知症予防研究協会

認知症の危険因子

日常に潜む認知症リスク、食後高脂血症を見逃すな!

食後高血糖という言葉は最近テレビでも目にしますが、食後高脂血症というのはなかなか馴染みがないかもしれません。

食後高脂血症は通常の血液検査等の空腹時検査ではわかりません。

高脂血症の状態は認知症のリスクを高め、気づかないうちに進む動脈硬化もまた認知症のリスクを高めることになります。

今回は食後高脂血症について紹介します。

食後に中性脂肪が異常に増えてしまう食後高脂血症

食事でとった脂質は、小腸から吸収され、大きな脂の玉となって血液内に入っていきます。

この玉は含まれる中性脂肪等が少しずつ消化酵素によって少しずつ分解され、最終的に脂肪酸になり、細胞に取り込まれ、エネルギー源として使われることになります。

我々が食事から脂質を摂取すると、このような過程を経て日々の活動に使われたりいざという時のために蓄えられますが、この血液から細胞に取り込まれるまでの過程が遅い人が一定数います。

そうした人は、血液中に脂質が長時間留まることになるので、血液中の中性脂肪の量が異常に増えてしまいます。

これが食後高脂血症のメカニズムです。

レムナントは中性脂肪とコレステロールの厄介な塊

血液中に入った脂質がエネルギー源として細胞に取り込まれるほど小さくなる前の中性脂肪とコレステロールの入り混じった塊をレムナントといいます。

食後高脂血症は、このレムナントが長時間血中に居座る状態と言い換えることができます。

脂質が多い食事を摂ると、健康な人でも中性脂肪は上昇しますが、食後3〜4時間で最も高くなり、6〜8時間には元の値に戻ります。

対して食後高脂血症の人は、食後すぐに中性脂肪が異常に高くなり、さらに最も中性脂肪が高くなる時間帯は、食後5〜6時間後と遅くなります。その後は食後8時間が経っても空腹時の値までは戻りません。

血液検査をした時に採取した血液が並んでいるのを見た経験はあるでしょうか?並んでいる血液の中に、たまに白濁した採血菅があることがあります。

この白濁の正体がレムナントです。

これは血液を遠心分離すると血清が濁るのでよくわかります。

動脈硬化を引き起こす原因となるレムナント

レムナントは血管内を流れて血管壁に入り、分解されます。悪玉のLDLコレステロールよりも血管壁に入り込みやすいといわれますが、入り込む時にレムナントに含まれるコレステロールが血管壁にくっつきます。

これが繰り返されることで動脈硬化が引き起こされます。食後の中性脂肪が高いほど、狭心症や心筋梗塞を起こす危険性が高まることも明らかになっており、基準値の149mg/dLを超えるとその危険度は約2倍になることがわかっています。

食後高脂血症の検査は?

通常の血液検査は空腹時に採血が行われますので、食後高脂血症が起きているかはわかりません。

検査基準はありませんが、食後高脂血症かどうかの検査はいくつかあります。

簡単に調べるには食事をしてから4時間後くらいの中性脂肪を測定し、空腹時と比較する方法があります。

より正確に判断する方法としては、まず12時間以上絶食し、空腹時の中性脂肪を測定します。次に高脂肪食を摂取し、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後に中性脂肪を測定し、その変化を調べる方法です。

検査中はベッドで安静にする必要があるのと、時間もかかり、採血も多いので患者さんへの侵襲性が高く、負担が大きいのが難点です。

他にも検査方法はありますが、どの方法を選ぶかは専門医の判断によります。

メタボ体型の方や、日頃の食事が不規則で脂肪の摂りすぎな方、食事をするとすぐに眠たくなる方等は一度調べてみるといいでしょう。

食後高脂血症の検査をした方が良い人は?

先にも書きましたが、食後高脂血症の検査を考えてみるべき人は、やはりメタボ体型が基準になります。

メタボ体型の基準値は、おへそ周りの腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上で、脂質異常症、高血糖、高血圧のうち2つ以上が当てはまる場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

その他、糖尿病に罹患している人、お腹が出てきた中年の人、運動不足の人、寝不足の人、食べた後にすぐ眠たくなる人など、気になる人は検査をしてみるのがいいでしょう。

メタボの悪影響をおさらいしよう

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が多くお腹がポッコリ出てしまった状態がベースとなっていますが、メタボの悪影響について簡単におさらいしておきましょう。

そもそも脂肪は、余ったエネルギーを貯蔵するのに最適な形です。

人間に必要な3大栄養素の炭水化物、脂質、たんぱく質のうち、炭水化物とたんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーを作りますが、脂質は1gあたり9kcalものエネルギーになります。

ですので脂質の形で体に貯蔵した方が効率がいいのです。

しかし現代は飽食の時代。さらに脂質の多い食事や食生活の乱れよってエネルギー過多の状態になってしまっていますが、そうなると脂肪がどんどん蓄積され、内臓の周りに脂肪が蓄えられるようになります。

脂肪は蓄えられるだけならいいのですが、最近の研究で、脂肪を構成する脂肪細胞はアディポサイトカインという物質群を合成、分泌し、体内の糖や脂質の代謝に関与しているということがわかりました。

脂肪が増えるとアディポサイトインの中でも善玉とされる、脂肪燃焼や動脈硬化を予防するアディポネクチンの分泌が減り、糖や脂質の代謝を乱す悪影響のアディポサイトカインの分泌が増えます。

こうした状態が進むとインスリン抵抗性を招き、脂質異常症や糖尿病、高血圧の原因になり、さらに血管壁に慢性的な炎症を起こすことで動脈硬化も進行させます。

インスリン抵抗性は食後の中性脂肪の分解を停滞させ、レムナントを増やす原因にもなります。

また、インスリン抵抗性があると、同じ食事をしても血液中にできる脂質の粒子が多くなることもわかっています。

他にもメタボリックシンドロームの及ぼす悪影響は解明されていないものも含めて数知れずですが、重要なことは、メタボリックシンドロームが進めば、悪影響の悪循環が働いて、相乗効果的に体内に悪影響が出るという事実です。

食後高脂血症の対策とは?

脂質異常症の生活改善については別の記事で詳しく解説しますが、基本的には食事と運動とストレス対策になります。

一番取り組みやすいけれどもある意味難易度が高いのが食事です。

認知症協会では、認知症予防も食事が基本だと考えていますが、脂質異常症、メタボリックシンドロームに人はとにかくカロリーオーバーです。

基礎代謝量と一日の活動で消費されるカロリー以上に食べれば蓄積されますし、それ以下であれば脂肪はたまりません。

カロリーを消費するには基礎代謝量を上げるか、活動量(運動)を増やすか、になりますが、基礎代謝量を上げるために筋肉をつけても、筋肉1kgあたり基礎代謝量は約10kcalほどしか上がりません。

活動を増やすにしても、例えば1時間歩いてもせいぜい200kcalほどしか消費できません。

それならご飯を減らしたり、揚げ物を減らしたり、甘いものを控えた方が圧倒的に早いし効果的なのです。

そしてカロリーを計算できるようになったら、より良質のもの、不足しがちな栄養素をしっかりと取り入れましょう。そのためには、良質なサプリメントは大いに役立ちます。

認知症予防という観点でも、心体のコントロールは必須です。

食事を管理し、足りない栄養をサプリメントで補うというのは、現代人のライフスタイルでは当然の姿と言えるでしょう。

体型は健康のバロメーターであり、体型の悩みはストレスにもなります。

メタボが気になり始めたら一度食事の量と質を見直してはいかがでしょうか?


無料の書籍には、健康な脳を作る食生活のヒントが書かれています。

健康な脳のための食事は、健康な体づくりに影響します。

ぜひ参考にしてみてください。

↓↓↓

  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

-認知症の危険因子

© 2020 認知症協会 All Right Reserved.