認知症の予防として大事なことに、質のよい睡眠があげられますが、
寝ている間にトイレに行きたくなって眠りが妨げられるという経験はないでしょうか?
どこかへ出かけてもトイレが気になって思い切り楽しめない、ということはありませんか?
頻尿は、時に生活の質を下げてストレスの原因となります。
今回は、夜にトイレに起きる夜間頻尿について紹介します。
頻尿についてまず知るべき知識、夜間頻尿とは?
最近なんだがトイレが近いような気がしませんか?
もちろん加齢によるものもあります。
ただ、そのせいで例えば夜眠れなかったりすれば、質の良い睡眠が取れているとは言えませんよね。
質の良い睡眠が取れていないと認知症に少しづつ近づいて行くことになり兼ねません。
まずは知りましょう。そしてチェックと予防も覚えていきましょう。
夜間の頻尿が気になる!
夜間頻尿とは、就寝中に排尿のために1回以上起きなければいけないという状態であり、生活の質を落とすものです。
おそらく1回は起きるという方も多いかと思いますが、それで特に日常生活に支障がない場合は経過観察ですが、
夜間に2回以上トイレに行く場合は、生活に支障が出ますので、治療の対象になることが多いようです。
年齢が高くなればなるほど夜中にトイレに起きる回数も増加する傾向があります。
夜中にトイレに行くのは転倒リスクも高まるという危険も伴います。
では、夜間頻尿の原因について考えてみましょう。
膀胱が小さくなる
尿は膀胱で溜められますが、膀胱は筋肉でできています。
加齢に伴って筋組織が弾力を失ってくると、膀胱は広がらなくなってきます。
そのために膀胱内で溜められる尿の量が減って、頻尿の症状が出ます。
夜間の尿量が増える
通常寝ている間は尿の回数が少ないです。それは、脳からの指令で尿を作る量を減らしているからです。
具体的には、脳の下垂体から分泌される抗利尿ホルモンであるバソプレシンの働きで、尿を作る量が減ります。
このバソプレシンは、加齢によって夜間の分泌量が減ってしまいます。
そうすると寝ている間につくられる尿の量が増えて、夜間に排尿する必要が出てきます。
このバソプレシンの働きの加齢による変化は、高齢者で脱水になる要因にもなりますので侮れません。
また、心臓や腎臓の機能低下によって下半身に水が溜まってむくむことも夜間頻尿の原因となります。
寝ているときは体が横になりますので、下半身に溜まっていた水分が心臓や腎臓に戻ってくることで排泄しないといけない尿量が増えます。
もちろん、寝る前に大量の水を飲んでいたり、糖尿病がある場合や塩分の取りすぎで喉が渇いて水分を摂りすぎると尿量は増えてしまいます。
睡眠がしっかりとれていない
以前の記事、
あなたは大丈夫?認知症のリスクを高める睡眠時無呼吸症候群を解説!
でも紹介しましたが、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害も夜間頻尿の原因となります。
眠りが浅くなることで夜間に起きる回数が増え、膀胱にさほど尿は溜まっていなくとも尿意で起きたと感じることがあります。
また、眠りが浅いと抗利尿ホルモンも分泌されにくくなるので尿の量が増えることに繋がります。
夜間頻尿にどう立ち向かうか?
夜間頻尿の治療のためには原因を知らなければなりません。
気になる場合は排尿記録をつけることをおすすめします。
排尿記録とは?
排尿記録とは、丸一日排尿のたびに、目盛付き容器で尿量を測り、排尿した時刻とともに記録することです。
チェックすべきは、
①1日の尿量の合計
1日の尿量の合計を出して、それに対して就寝してからの間と起床したときに出した尿量(夜間尿量)が何%占めているかを計算します。
33%以上なら夜間多尿が原因であるといえます。
②1回の尿量
これは、夜間に限らず頻尿気味で、起床時から就寝時までに8回以上の排泄、1回の尿量が200mL以下となることが度々ある場合には、
膀胱が小さくなっていることが原因であるといえます。
③排尿の多い時間帯
夜間にだけ排尿の回数が多い場合は、睡眠障害が疑われます。
医療機関でできる検査は?
医療機関ではより精密に検査することが可能です。
①尿検査
腎臓に疾患がある場合や、尿路感染症、膀胱炎、糖尿病などの夜間頻尿の原因となる病気がわかります。
②腹部超音波検査
超音波検査では、膀胱や前立腺、腎臓の形がわかります。
変形性の病気から頻尿になることもあります。
排尿後に膀胱内に残った尿の量も測定します。
夜間頻尿を改善するには?
夜間頻尿の改善には、原因によって治療法を変えていく必要があります。
まず基本は生活習慣で正せるところを正す、というのが肝心です。
日本泌尿器科学会では、生活習慣の改善で夜間の排尿回数が半減したという研究結果が発表されています。
水分の摂取過多、摂取不足に注意
高齢者の水分の摂り方は非常に難しいというのが正直なところです。
認知症の患者様でもしばしば水分補給の難しさが問題となりますが、水分は寝る前に一気に飲むのではなく、日中満遍なく少しづつ飲むことが大切です。
適切な水分量は、体重(kg)x25mL を目安にしてください。覚えにくい場合は、1日1〜1.5Lの水は飲むようにします。
1日の尿量の合計が1L未満だった場合は、さらに水分摂取量を増やす必要があります。
これはアルコールや緑茶、コーヒーでなく、水のみでこの水分量とします。
アルコールや緑茶、紅茶、コーヒーなどは脱水を起こすことがあるので避けましょう。
夜間頻尿で水分摂取過多に注意はしたいですが、認知症の方は多くの方が水分摂取不足になっていることもありますので、周囲の方の適切な水分コントロールが大切になってきます。
適度な運動を心がける
夕方以降の散歩などの運動は、下半身に溜まった水分を心臓に戻すことができるというメリットがあります。
余った水分を汗として排出できますので、汗をかくくらいの早歩きは効果があります。
夕方になると足がむくむ人は、寝る前までに足をマッサージするなど、ある程度むくみを改善してから就寝することも有効です。
膀胱が小さくなっていたら?
膀胱が小さくなるというのは、筋肉のしなやかさの問題ですので、下半身を中心に筋トレをするというのも効果があります。
しかしながら、効果が出るのに時間がかかり、継続が困難ということで、薬物治療が検討されることが多いです。
抗コリン薬やβ3作動薬という種類の膀胱の収縮を抑えることを目的とした薬剤が検討されますが、副作用も多く、
認知症予防の観点からは薬物治療はおすすめしません。
なんとか生活習慣とトレーニングで改善したいところです。
睡眠障害が起きていたら?
睡眠時無呼吸症候群については、
あなたは大丈夫?認知症のリスクを高める睡眠時無呼吸症候群を解説!
にも治療法を紹介していますが、重症の場合は専門の医療機関に相談することも重要です。
しかしながら、睡眠障害も生活習慣病やストレス等が問題の場合が多いので、まずはこれらを取り除くことが先です。
夜間頻尿と認知症の関係は?
夜間頻尿は高齢になればなるほど症状が出てきます。これは認知症と無関係に増えます。
後述しますが、認知症による機能性尿失禁と合わさると、排泄がいよいよ難しくなってしまいます。
早めに状態把握がポイントです。
認知症が進行して現れる症状としても、尿失禁があります。
これは特に機能性尿失禁といいますが、これは排尿機能に問題はなく、身体機能の低下による歩行障害や、トイレで排泄する意識の消失、やり方がわからなくなる、といったことで起こります。
こうなった場合は、時間を決めてトイレに行くようにするなどの行動療法がある程度有効です。
やむを得ない場合はオムツになりますが、できるだけ前向きに対処します。
稀に認知症発症の初期から尿失禁が見られる場合はありますが、その場合は膀胱の活動を抑制している脳の前頭前野が萎縮している可能性があります。
その他、今回は紹介していませんが、過活動膀胱も認知症で多い傾向があります。
本格的に認知症が発症してからでは、夜間頻尿に対処するのは困難になりますので、今のうちから体の状態を知っておくのは非常に大切です。
今回は、悩みの多い夜間頻尿について紹介しました。
夜間頻尿は質の良い睡眠を妨げる可能性が高く、認知症予防としてもしっかりと知っておくべき知識です。
また、夜間頻尿には隠れた基礎疾患もあることが多く、認知症予防のための生活習慣の改善と重複できることがほとんどです。
気になる場合は早めに自分でチェックして見ましょう。
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