美容院によく行く人は認知症になりやすいかもしれません。脳血管性認知症のリスクは脳卒中で上がります。脳卒中のリスクは日常にも潜んでいるのです。

認知症の危険因子 認知症の基礎知識

美容院にも潜む認知症のリスク?!美容院脳卒中症候群とは?

今回は、日常に潜む認知症の意外な脅威を紹介します。

それは普段美容院に通う誰しもが経験したことがあり、

誰しもがその症状になる可能性がある。

そしてそれは最悪の場合認知症の症状が出る引き金となるかもしれない、といったお話しです。

その症状の名前は、「美容院脳卒中症候群」。

では早速紹介していきます。

 

美容院脳卒中症候群は認知症の引き金になる?!

株式会社日本アルトマークから出版されているクレデンシャルという雑誌があります。

毎号最近の医療に対する見解が幅広く載っているので、目を通すのが習慣になっています。

そんなクレデンシャルですが、最新の2019年3月号に認知症の意外な脅威になりそうな記事を見つけたので紹介します。

脳卒中は脳血管性認知症のリスク要因の1つ

まずはじめに、認知症の大きく4種類についてのおさらいですが、

・アルツハイマー型認知症

・脳血管性認知症

・レビー小体型認知症

・前頭側頭型認知症

です。

このうちアルツハイマー型認知症は認知症全体の63%、

次いで多い脳血管性認知症は認知症全体の20%となっています。

最近では、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内には脳梗塞の所見がよく見られることから、

アルツハイマー型認知症も脳血管性認知症も、相互に作用し悪循環を起こし、

認知症の進行を早めると考えられています。

つまり、脳血管性認知症を起こすとされる、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等のいわゆる「脳卒中」も、しっかりと対策をとって予防すべき、ということです。

美容院脳卒中症候群とは?

脳血管性認知症は、糖尿病、高血圧、高脂血症等の生活習慣病を是正するように生活習慣を見直すことで発生を抑制できる認知症です。

原因がはっきりしているために治療による認知機能の改善も期待できますが、

脳卒中を繰り返すたびに認知機能の低下は進行していきます。

しかし脳卒中を引き起こすのは生活習慣だけではありません。

交通事故等の衝撃でも脳卒中を引き起こす可能性があります。

さらには普段何気無くしている生活習慣が脳卒中の引き金となることがあるのです。

 

報告例は少ないですが、

「美容院脳卒中症候群(beauty parlor stroke syndrome)」と名付けられた脳卒中があります。

(cf. Weintraub MI: JAMA 1993; 269: 2085-2086)

美容院では仰向けで洗髪するので、その時首は後ろの方にグッと反ることになります。

首の左右には、脳幹部や小脳に栄養を送る椎骨動脈がありますが、

首を過度に曲げることによって、その椎骨動脈が圧迫され狭くなったり、

塞がれてしまったり、椎骨動脈の血管壁が避ける”外傷性動脈解離”を起こすなどして、脳卒中が起こると考えられているのです。

自宅でもそれ以外でも起こり得る美容院脳卒中様脳卒中

実は自宅で上記の美容院脳卒中を発症した例が報告されています。

(cf. 植田明彦ほか: 脳卒中 2004;26: 461-464)

その症例は、30歳の男性でしたが、

発症の3年前からソファに寝そべりながら肘掛から頭を反らして、ちょうど美容院での洗髪の様な格好でドライヤーで髪を乾かす習慣がありました。

この姿勢で首を急に左に回したところ、急にめまいが出現したとのことです。

その後起立や歩行ができなくなり、発音がうまくできなくなる構音障害が現れ、

顔面を含む右半身の温痛覚低下などが認められ、脳血管造営の結果、

”椎骨動脈解離”と診断されました。

結局この患者さんは、脳虚血に対する治療が行われ、発症3ヶ月でようやく普通歩行が可能になりました。

この症例は美容院では起きていませんが、

発症の仕方は美容院脳卒中症候群と全く同じです。

 

外傷性動脈解離は、交通事故やスポーツでの急激な首の曲げ(屈曲)や回し(旋回)によって発症するケースが多いのですが、

日常的な動作でも十分に起こり得ます。

特に、首を後ろに反らせて行う洗髪は、美容院だけでなく、病院や介護の現場でも行われているため、医療や介護に携わる人は十分に注意する必要があると論文の中では指摘されています。

こうした外傷性の脳卒中でも、血管に障害が起きればそのまま認知症機能の低下を招いて、認知症と診断されるケースは多々あります。

 

頭を大事にするとは、頭に向かう血液を大事にすること。

ひいては、身体中をめぐる血液を大事にすることです。

これも予防の大事な要素と言えるでしょう。


脳血管性認知症は年齢に関係なく起こるが予防できる認知症

いかがでしたでしょうか?

今回は日常に潜む認知症に繋がるリスクの話しを紹介しました。

そうは言っても、多くの人が美容室に行かない訳にはいきませんし、

日常に怯えていたら生活もできません。

外傷性動脈解離は椎骨周辺の圧迫、急な屈曲で起こります。

事故はさすがに防げないケースもあるかもしれませんが、

首を使ったりするスポーツや、激しい音楽ライブ観戦など、

首を動かす可能性があるときは、しっかりとストレッチをしましょう。

 

高齢になると首の周りの筋肉も衰えますので、その分椎骨がヘルニアになったり痛めたりするケースが多くなります。

適切に整体やリハビリ、鍼灸院に通うのもいいでしょう。

 

そして何をおいても脳血管認知症は生活習慣病に伴うリスクが高いものです。

食事と運動と意欲を中心とした生活習慣を見直して、認知症のリスクを少しでも減らしていきましょう。


無料の書籍には認知症についての知識とメインの食事について書いています。

ぜひご覧ください。

 


  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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