”酒は百薬の長”ということわざがあります。
適度な酒は健康に役立つという意味ですが、実際のところはどうでしょうか?
認知症協会の記事でも、ワインの持つ抗酸化作用が認知症予防になるという記事を書いていますが、
アルコール全体を見ると、世界的に有名な医学雑誌「Lancet」の2018年の記事に今までとは違う見解が示されました。
195の国と地域の飲酒に関する研究を総合的に解析したところ、病気や怪我などのリスクが最も低くなるのは、「飲酒ゼロ」のケースであるという結果が出たのです。
これは、飲酒が毒になる得る結果となりましたが、
認知症予防の観点ではアルコールとどう付き合えばいいのでしょうか?
今回はお酒と認知症予防について認知症協会の見解を紹介します。
お酒に弱い日本人、お酒を毒にしないためには?
まずはアルコールの危険性について紹介したいと思います。
飲酒による状態変化
”酔う”とは、お酒を飲んで、血液中のアルコール濃度が上昇し、アルコールが脳に作用することで起こる現象です。
飲酒による酔った状態には段階があり、
血液中のアルコール濃度の上昇に伴って、
ほろ酔い→酩酊→泥酔→昏睡
と変化していきます。
お酒を飲んで陽気になる程度だとほろ酔い状態ですが、だんだん気が大きくなり何度も同じことを話すようになると酩酊状態に移行しています。
意識がはっきりしないようになると足元もおぼつかなくなり泥酔状態になり、ついには揺り動かしても起きないという昏睡状態に陥ります。
お酒に強い人と弱い人の差
血液中のアルコールは肝臓で分解され、分解されるとアセトアルデヒドという毒性の強い物質になります。
これがさらに酢酸に分解され、最終的には二酸化炭素と水になります。
お酒に強い弱いは、アルコールが分解されて生成されるアセトアルデヒドの分解の速さで決まります。
お酒に強い人は、アセトアルデヒドの分解が速く、弱い人はアセトアルデヒドの分解に時間がかかり、
顔が赤くなったり、頭痛や吐き気が起こったりします。
体調によってもアルコールの分解速度は変わりますが、遺伝子的な要素で日本人はお酒に弱い人種といえることがわかっています。
日本人の5人に2人はお酒に弱い
アセトアルデヒドを分解する速度でお酒に強いか弱いか決まるという話でしたが、
アセトアルデヒドを分解するのは「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」です。
日本人の5人に1人は、このALDH2の働きが弱く、さらに日本人の50人に1人は、全く機能しない不活性型のALDH2を持っていて、この人たちはつまりお酒を全く飲めない体質ということになります。
これは遺伝子によって決まっているので、生まれた時から決まっています。
後から変わることもありません。
こうなると、かなりの日本人が実はお酒が弱い、飲めないということになりますが、
上記のALDH2の働きが弱かったり、不活性型の持ち主に無理にお酒を飲ますと、いっぺんに昏睡まで加速する恐れがあるので絶対にやめましょう。
一気飲みは危険度が高い
お酒を大量に飲むのはもちろん危険ですが、
短時間で一気に飲む「一気飲み」も大変危険です。
具体的なペースとしては、男性で2時間程度でビールなら1250mL程度、女性なら1000mL程度のペースを超えて飲むと急性アルコール中毒など、昏睡状態に陥る危険性が高まることが知られています。
認知症を加速させる「アルコール依存症」の恐怖
アルコールはその分解物のアセトアルデヒドが毒性が強く、お酒に弱い人は気持ち悪くなったり頭痛がしたりしますが、
最初に書いた酔いの状態は、アルコール濃度そのものが問題になります。
多量の飲酒は様々な病気(肝臓障害、膵炎、糖尿病、痛風、消化管出血、癌、脳萎縮、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死などありとあらゆる臓器を障害する)の原因となることがわかっていますが、
最も危険なのが「アルコール依存症」です。
アルコール依存症になると、毎日お酒を飲まずにはいられなくなり、飲む量をコントロールできなくなります。
その結果、健康や日常生活に支障が出ても飲酒をやめられなくなります。
アルコール依存症になりやすいかどうかは、遺伝子や環境因子が複雑に絡まっていて全てが解明されていません。
しかしながら、イメージとしてはアルコールが脳に作用して、良い気分にさせてくれる結果、逆に脳のブレーキを破壊してアルコール濃度に対して脳が反応できなくなるという図式で間違いないでしょう。
アルコール依存症の臓器への悪影響のほかに重大なのは、アルコール依存症が自殺や自殺企図のリスク要因であることです。
これは今まで様々な研究が行われている結果であり、アルコール依存症の男性はそうでない男性に比べて9倍、女性だと35倍も自殺の危険性が高いとも言われています。
このような精神面への影響は、アルコールによって抑うつ症状が出現することが発展して自殺へとつながることが指摘されていて、
アルコール依存は将来のうつ病への近道に他なりません。
アルコール依存症のサイン
アルコール依存症は、立派な病気ですので、病院で診察してもらえます。
禁酒するための薬もありますので、深刻な場合は専門の医療機関を受診することをお勧めします。
世界保健機関によるアルコール依存症のサインを以下に挙げますので、思い当たり場合は受診を検討してください。
✔️お酒に強くなり、飲む量が増えている
✔️「ほろ酔い」では飲んだ気がしない
✔️お酒を飲んで記憶を失うことがある
✔️お酒を飲むことを優先した生活をしている
認知症と飲酒の関係は?
2018年のSchwarzingerらの論文によると、アルコールで問題を抱える人は、認知症を発症しやすいと発表しています。
飲酒は、アルコールが脳のブレーキを壊して依存症を起こさせることが大きな問題ですが、気分の良いほろ酔い状態では、脳内GABAのの放出を促進させることでドーパミンの放出も上がり、気分が良くなると考えられています。
この状態は脳にいいように思えますが、このメカニズムで起こる快楽は、同じ刺激だとどんどん慣れていくので反応が悪くなっていきます。
その代わりに、快楽とバランスを取るように不快な刺激がどんどん増していくという負のスパイラルが起き、結果的に脳がアルコールに溺れていきます。
こうなっては、脳に良いことは1つもありません。
回りくどい書き方をしましたが、
認知症予防のためには、お酒は飲まないに越したことはありません。
ワインの抗酸化作用、フレンチパラドクスについても度々紹介していますが、その主要成分であるレスベラトロールを摂るなら、
赤ぶどうジュースでもぶどうの皮ごと食べるでも良く、むしろサプリメントでも摂取できるので、わざわざアルコールを選ぶ必要はないのです。
脳に作用し、依存症という中毒を引き起こす。
その可能性があるものを体内に入れることはまず避けたほうが無難ということです。
そういった成分はもちろん薬や食べ物、飲み物に含まれていることもあります。
全く摂取しないわけにはいかないので、何物も”ほどほどがいい”と心得ましょう。
適度な飲酒の量とは?
とは言え、お酒を飲むことでストレスを発散させている人も多いのが現状です。
ストレスは認知症にとって大きなリスクですので、多少は飲んでリラックスしたい。
(それが依存だと言えなくもないですが・・・)
というわけで、節度のある飲酒量とはどの程度なのかというと、
男性で1日に純アルコール量で20g程度、女性や高齢者はそれよりも少なめになります。
具体的には、
・ビールなら500mL缶1本
・日本酒なら1合
・チューハイなら350mL缶1本
・焼酎なら100mL
・ワインなら200mL
・ウイスキーなら60mL
ほどになります。
意外と少ないと感じる方も多いのではないでしょうか?
これは、大規模な疫学研究で、飲酒をする人の中で1日20g程度の飲酒量の人の死亡リスクが最も低かったためです。
また、男性の場合は、1日40g、女性の場合は1日20gを超えると、生活習慣病の危険性が高くなることもわかっています。
飲酒の際はこれらの量を参考に、楽しみながらお酒を嗜んでください。
もちろん毎日の飲酒は避けて、休肝日を設けるべきなのは、言うまでもないかと思います。
今回はお酒と認知症についての見解を紹介しましたが、
薬でもなんでも、脳に作用して言動が変わってしまうようなものはやはり怖いと言わざるを得ません。
ストレス発散は、体を動かしたり考え方を変えたりすることで乗り越えることが第一です。
何事もほどほどにバランスよく”つまみ食い”くらいがちょうど良いでしょう。
現時点で一番信用できる認知症予防のヒントがいろいろと書いてありますので、無料の書籍も是非読んでみてください。
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