高血圧治療は社会全体で取り組むことが必要。認知症予防研究協会

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変わる高血圧治療。認知症も生活習慣病も予防の必要性が明確に

2019年に改訂された高血圧治療ガイドラインですが、今回の改訂ではより厳しめの血圧の目標値が設定されました。

特に正常血圧は上が120mmHg未満かつ下が80mmHg未満のみとなり、それ以上は正常でも高値血圧となり、日々の生活に注意することが求められます。

それは、それ以上の血圧が、認知症をはじめとする将来の健康リスクを害することになることが明確になったからです。

では今後の高血圧治療はどうなって行くのでしょうか?

これは認知症の予防の観点でも非常に重要な知識です。

今回は東北大学名誉教授、伊藤貞嘉先生の見解をふまえて、認知症協会でも考えていきたいと思います。

高血圧の治療はどう変わる?

今までも厳しくなったり緩くなったりと度々変わってきた高血圧治療ガイドラインですが、医療技術も発達し、何より膨大なデータを蓄積し解析する技術が発達したので、改訂の度にその信憑性は高まると言えると考えられます。

そして今回の改訂では、75歳未満の人の降圧目標が上下血圧ともこれまでより10mmHgも低く厳しい値となりました。

具体的には、上が130mmHgかつ下が80mmHg未満ですが、これでも正常高値血圧の分類です。

現在高血圧治療をしていない人でも、上が120未満mmHgかつ下が80mmHg未満が正常血圧ですので、ここを維持する必要があります。

では治療はどうなるか?

現在の治療でこれまでの上が140mmHgかつ下が90mmHg未満を目指したり、維持している人は、さらに下げる必要が出てきました。

しかしこれは、薬を追加するのではなく、運動や食事療法、サプリメント等を上手に取り入れて正しい生活習慣をしていくことが重要になります。

実際に生活習慣が改善されると、降圧薬も効きやすくなり、今まで通りの薬でも十分に血圧が下がることがあり、場合によっては薬を減らしたり、中止するところまで達成できることも可能だということです。

体全体に劇的に作用する「薬」は、使えば使うほど体を悪い方に慣れさせる側面もあります。できるだけ薬の量は抑えたまま、体に悪い生活習慣を見直すことが一番大事です。

治療から生活習慣の改善、そして予防へ

では具体的にどう血圧の低下、維持を行なっていくべきでしょうか?

これは認知症予防と置き換えても多くの場面で重複することです。

具体的対策は?

まずは運動。無理のない範囲で毎日少しずつでも自分に合った運動を取り入れることが降圧に繋がるというのは明らかになっています。

普段仕事等で何気なく距離を歩いているから大丈夫じゃないか、と考える人も多いですが、実は何気なく歩くのと健康のために歩いている、という意識の違いは、体に大きな違いをもたらします。

何の目的で何をして、ゴールは何なのか?

ということをしっかりとイメージして取り組むことが大切です。

また、高血圧対策として欠かせないのが「減塩」です。

日本の食生活で塩分摂取に最も大きく影響しているのは実は加工食品に含まれる塩分だそうです。

現代人の忙しい食卓には欠かせない加工食品ですので、全く使わないのは難しい話です。

できるだけ減塩のものを選んでみましょう。

減塩のものが味が薄いわけではなく、加工食品がもともと塩味を増やして記憶に残る味にしているのです。

そういう意味では減塩のもので塩分は十分です。

減塩は味がしない、という先入観を捨てましょう。自分の塩味の感じ方が鈍っていると認識しましょう。

今回のガイドラインの改訂のもう一つの注目ポイント

今回のガイドラインの改訂では、現在高血圧の人に対する治療の重要性だけでなく、「高血圧と診断されていないが血圧が高めの人」や、「現在は正常血圧の人」にも高血圧対策を呼びかけています。

つまり、すべての人に減塩をはじめとする生活習慣の改善を求めています。

高血圧になる人が少なくなれば、脳卒中や脳梗塞のリスクも下がり、健康寿命が伸びることにつながります。

しかしながら、「健康な人含めてすべての人が高血圧対策を」といっても、なかなか生活習慣は変えづらいですよね。

今回のガイドラインでは、”社会全体での取り組み”の必要性も盛り込まれています。

社会全体の取り組みとしては、まず現在高血圧の患者さんは、あまり自覚がないことからそのまま放置しがちですが、積極的に血圧を正常にする努力をするべきですので、かかりつけ医としっかり治療プランを相談し、

地域の保険師や管理栄養士、最近では身近にある薬局でも、”健康サポート薬局”としての役割を新たに担う薬局が増えていますので、薬局の薬剤師に相談するのも大変有益です。

言ってみれば薬剤師さんは専門の知識をたくさん持っています。無料で何でも相談できるので利用しない手はないでしょう。

そしてさらに大事なのは、行政や産業界の取り組みです。

2018年末に、「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立しました。

この流れをさらに加速すべく、減塩を基本とした商品開発や、行政のリハビリ施設等、社会全体で総合的に高血圧対策に取り組むことが求められています。

まとめ

日本では高血圧にある人が4300万人いるとされています。

しかしながら、治療に取り組んでいる人はその半分、血圧コントロール良好な人はさらにその半分と考えれらています。

高血圧は、死に至る重大な病気の起爆剤になったり、健康寿命を短くすることが明らかになってきている現在ですが、今回の高血圧医療ガイドラインの改訂は、この高血圧という病気の重要さを国全体で意識し、取り組んで行くべきだという強い主張が感じられます。

認知症予防に興味がある方なら、高血圧の怖さがよくわかると思います。

認知症予防は考えた時が始めどきです。


 

高血圧等の生活習慣病は、認知症の発症を促進したり、認知症を悪化させる原因であることは明らかです。

40代を迎えたら朝晩と血圧を測定することをお勧めします。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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