認知症予防に必須の睡眠を妨げるむずむず脚症候群

認知症の危険因子 認知症予防法

認知症の原因、睡眠不足の原因になる病気はたくさんある!むずむず脚症候群って知ってますか?

認知症協会では、認知症予防につながる知識を紹介していきますが、

今回はさまざまにお問い合わせを頂いている中で、皆様に共有した方がいいと思った知識を紹介します。

それは、不眠につながる疾患についてです。

睡眠が脳のゴミを取り除き、認知症予防に欠かせないことはご承知の通りですが、

その睡眠を邪魔するものは、ストレスもあれば生活習慣、食習慣、薬の副作用もあります。

さらには、不眠を引き起こす病気というものもありますのでそれに対しても知識を持って対処することが大切です。

不快からの不眠、むずむず脚症候群を知ろう!

寝ているときに、脚に不快感があって眠れないときはないでしょうか?

布団に入るとむずむずしたり、ほてったりしてなかなか眠れないのは、「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」かもしれません。

むずむず脚症候群とは?

むずむず脚症候群は疾患名をレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)、もしくは下肢静止不能症候群とも言います。

日本神経治療学会によると、日本でむずむず脚症候群の症状のある人の割合は4%程度とされています。

発症しやすい年齢は、60歳から70歳で、70歳以降は患者数は減っていきます。

性別では、男性より女性が多い傾向にあります。

むずむず脚症候群の特徴は、大きく分けて4つあります。

脚の不快感

よく言われるのは、脚の表面や内側を虫が歩くような感覚です。

それと脚のかゆみ、ほてり、痛みなどの症状の場合もあります。

特に脚の内部のかゆみは我慢がしにくく、脚を動かしたくなりじっとしていられなくなります。

夕方から夜にかけて脚の不快感が起こる

脚の不快感は夕方から夜にかけて起こります。

これが不眠の原因となってしまいます。

不眠が続くことで、ストレスがたまり、うつ状態になる人もいます。

もちろん不眠は認知症発症のリスクになります。

動かない時に症状が現れる

むずむず脚症候群の不快感は、姿勢を変えないで長時間いるときや、寝ているような安静時に現れたり、

余計に症状が感じられたりします。

脚を動かせば不快感が減ったり無くなったりする

不快感がある時に脚を動かしたり軽く叩いたりすれば、症状が減ったり無くなったりします。

脚の不快感よりも強い刺激を与えることで、むずむず症候群の症状を感じにくくしていることになります。

なぜむずむず脚症候群になるのか?

実はなぜむずむず脚症候群が発症するかは、まだはっきりとわかっていません。

現在有力な原因としては、

・ドパミンの機能障害

・鉄不足

の2つです。

これは後述のむずむず症候群が起こりやすい人からの考察と、運動に関すり情報伝達物質であるドパミンが大きく関与していると考えられるからです。

脳の神経伝達物質であるドパミンは、運動に関する情報伝達を行っており、機能が低下するために脚の不快感が起こると考えられています。

鉄分は、ドパミンを作るのに必要な栄養素のため、鉄不足がドパミンの量を減らしているのではないか、と考えられています。

また、ドパミンを作るのに必要な栄養素は、葉酸、ナイアシン、ビタミンB6もありますので、そちらも摂取する必要があると考えられます。

その他にも、透析患者さんでは高確率でむずむず脚症候群が現れるので、本来は出て行くはずの毒素が体内に蓄積されることで起こるものとも推測されています。

むずむず脚症候群になりやすい人はどんな人?

むずむず脚症候群の方の約半数は、遺伝的な体質が関係していると考えられています。

つまり、家族に発症した人がいると、むずむず脚症候群になりやすいということです。

特に45歳以下で発症した場合にはその傾向が強いということです。

その他にも、鉄欠乏性貧血、パーキンソン病、透析を受けているような慢性腎不全、糖尿病のある方、妊娠している方、

などで起こりやすい傾向があります。

ドパミンや鉄不足に関係する疾患に多いことがわかります。

腎不全をはじめとする臓器の疲労による代謝能の低下も関与していそうです。

むずむず脚症候群はどう診断されるのか?

むずむず脚症候群の診断は問診から始まり、血液検査と必要であれば睡眠ポリグラフ検査が行われます。

血液検査では、鉄が不足していないか確認します。

睡眠ポリグラフ検査では、不眠の原因を調べるため、むずむず脚症候群以外の不眠の原因も探るために行われます。

医療機関に入院となりますが、頭部や胸、脚などにセンサーを取り付け、睡眠中の脳は心拍数を測定します。

この検査では、「周期性四肢運動障害」があるかどうかもわかります。

周期性四肢運動障害とは、睡眠中、無意識のうちに一定の感覚で脚や手がピクッピクッと動く状態です。

この動きが1時間に15回以上繰り返す場合は、周期性四肢運動障害ということになります。

周期性四肢運動障害があると、脚や手が動くたびに目が覚めてしまうので、睡眠不足になる原因となりますが、

実はむずむず脚症候群のうちの4〜6割に周期性四肢運動障害があると考えられています。

むずむず脚症候群かな?と思っても近くの医院では検査ができない場合があります。

睡眠障害の専門医に診てもらう必要があります。

参考として睡眠障害の専門医がいる医療機関の一覧が日本睡眠学会のホームページに掲載されていますので、

リンクをつけさせていただきます。

↓↓↓

日本睡眠学会の睡眠医療指定医リストはこちらをクリック

むずむず脚症候群の治療は?

むずむず脚症候群も、症状をそのままにしておけばだんだん症状が強く現れる疾患です。

症状が軽いうちから改善するようにしたいところです。

症状が軽い場合

症状が軽い場合、まず考えるべきは日常生活の改善です。

例えば寝酒は症状が悪化させると考えられています。

また、コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも摂りすぎると症状を悪化させたり睡眠不足を引き起こすので、

夕方以降はカフェインをとらないようにするべきでしょう。

入浴はシャワーも使って刺激を与えると症状が軽減する場合があるようです。

あとは透析が必要になるような生活習慣、糖尿病にならないような生活習慣をするには必須なことですね。

症状が強い場合

症状が強く出ている場合や、日常生活の改善で効果が見られてない場合は、薬物療法を考えます。

鉄不足が血液検査の結果、明らかになった場合は鉄剤を投与します。

鉄分を含む食材を積極的に摂るようにします。

ドパミンの伝達機能を改善する薬剤もありますが、認知症協会としては、栄養成分以外の薬剤は推奨しておりません。

あとは神経の障害に使われる薬剤や痛み止めもありますが、これもまた副作用の問題や、腎機能の低下につながるので

おすすめはしていません。

できるだけ生活習慣を改善する中で克服していきたいですね。


今回は大事な睡眠を妨げる可能性のあるむずむず脚症候群を取り上げました。

基本的な対策としては、健康的な生活習慣を心がけることと、鉄分を多く摂ることです。

まだはっきりとしたメカニズムがわかっていないため、一度発症するとすぐには治らない疾患ですが、

前向きに健康に生活することで和らいでいくことは十分可能性があります。

それはすなわち認知症予防の生活と同じですので、日々輝いていきましょう。

  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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