食事以外で脳を活性化して認知症を予防する方法を紹介します。

認知症予防法 認知症の基礎知識

認知症を予防しよう!基本的な対策をまとめてみました!認知症の発症を遅らせる対策とは?

軽度認知障害(MCI)とわかったら、認知症の発症を遅らせる対策を取ることが大切です。

認知症には一歩手前の段階があり、軽度認知障害(MCI)と呼ばれています。

(詳しくは、「認知症には前段階があった!「軽度認知障害(MCI)」とは?予防は早ければ早い方がいい理由」を参照してください。)

現在では、この軽度認知障害の段階で予防対策に取り組むことで、認知症の発症を防げる可能性が示唆されています。

その具体的は対策について、今回は食事以外のことを中心に紹介します。

運動、知的活動、コミュニケーションは直接的に脳の刺激になる

認知症の発症を抑えるために、運動、知的活動、コミュニケーション等の方法を地域のみなさんと取り組む予防教室が全国にいくつかあります。

例えば、鳥取県では、軽度認知障害がある人を対象に認知症予防教室を開催していますが、参加者の認知機能を調べると、3ヶ月後、3年後と認知機能の改善が見られた、ということです。

参加者の多くが認知機能が下がったという報告があり、注目を集めています。

認知症の発症率が下がれば、高齢者が増えても介護費用は抑えられるので、行政にとっても利益のある活動です。

このような取り組みが、全国各地で広がっていますので、詳しくは最寄りの地域包括支援センターに確認するのがお勧めです。

では具体的に何をすればいいのかを紹介していきます。

自分でできる認知症予防。体を動かし頭を動かす。

認知症予防の基本は、脳に刺激を与えることなので、

体を動かすことと頭を使うことで脳の神経細胞を活性化していきます。

続けられる適度な運動をする

激しいスポーツをする必要はありません。

自分が楽しめるスポーツを探します。

最も手軽な散歩もかなり有効ということがわかってきました。

ポイントは、1日30分から1時間程度の散歩、欲を言えば早歩きをなるべく毎日することです。

もう一つ重要なポイントは、

一人ではなく、誰かとおしゃべりしながら歩く、

好きな音楽を聞き、口ずさみながら歩く、目標を決めて歩く、

景色を楽しみながら歩く、

といった、何か歩くにプラス感じる刺激を作ることです。

最近の研究でわかったことは、運動をすることで脳の神経を活性化するアセチルコリンなどの分泌物が増える、ということです。

認知症の方は、アセチルコリンの活性が低いことがわかっています。

アルツハイマー型認知症の薬で代表的な成分、ドネペジルがありますが、この薬の作用機序は、脳内のアセチルコリンを分解する酵素を阻害して、脳内のアセチルコリン量を増やすことです。

アルツハイマー型認知症に対する治療薬がアセチルコリンを増やすことなので、

そのアセチルコリンが適度な運動で増えるなら、これは手軽にできる認知症予防と言えます。

運動にはその他にも脳に新しい血管を作る物質を増やすとも考えられています。

もちろん運動することによって冷えを改善したり血流をよくしたり、

肥満を解消することもできます。

適度で続けられるあなたに合った運動をぜひ見つけてください。

●何でも興味を持って考える習慣をつける

パズルやゲーム、特に対戦ゲーム等は、考えるという点においてかなり優秀です。

相手と強さを競うことも刺激になります。

考える習慣というのは、訓練で身につきます。

一人でも簡単にできるのは、読書です。

どんな本でもいいと私は考えています。

想像が膨らむSF小説。

犯人がわかるまでドキドキする推理小説。

昔の人の叡智を知る歴史小説。

情報化社会を生き抜くビジネス本。

くだらなくも笑える漫画。

童心にかえって絵本。

美術品の写真集。

目から飛び込む情報は流れていくものも多いですが、少し目に入った情報を脳に受け止めて考えるだけで、脳は刺激を感じます。

オススメです。

●クリエイティブな趣味を見つける

制作活動は脳にかなりの刺激を与えます。

同じものを何個もつくるのもいいですが、少しずつ変化を与えるとより効果的です。

手芸、陶芸、花を生ける、料理を作る、絵を描いたりもいいでしょう。

デイサービスでは折り紙や塗り絵が積極的に行われていますが、それは脳への刺激と、心の平穏にとても効果的だと実証されているからです。

塗り絵にもそれ自体で治療効果のあるものもたくさんありますので、

別でご紹介する予定です。

●時には緊張感を持って話す

緊張は脳の神経細胞を活性化します。

緊張しすぎてストレスになってもいけませんが、

初対面の人と話すとか、

憧れの人に会いにいく、

久しぶりの人にわざわざ会いにいく、

外国の人と話す、なんてのもいいでしょう。

年齢を重ねると周りの人たちが年下になるので横柄な態度になりがちですが、

自分以外の人は全て必ず自分にないものを持っています。

敬意を持って話しましょう。

それがあなたへの刺激になります。

●旅行してみる

日常と違う場所に身を置くことはかなり刺激になります。

旅行に行くには事前に準備が必要ですが、

その準備も脳の活性化になります。

いつもと違う場所や風景は、人生に刺激を与えてくれます。

リフレッシュにもなるでしょう。

思い切って一人で外国に行くのもいいでしょう。

人生観そのものが変わる人も少なくありません。

行くまでがなかなか大変ですが、

行ってしまえばどうってことなくて楽しめる、という人が多い印象です。

やる前から無理だと割り切る前に、やってみてから考えるのもたまにはいいんじゃないでしょうか。

●やったことのないこと、やりたかったことをやる

医療の進歩によって、日本人の平均寿命は伸びています。

定年後も楽しく人生を歩める時間を増えています。

残念ながら日本人は働きすぎで時間がないのが特徴となっています。

やりたくてもできなかったことがたくさんあるんじゃないでしょうか?

でも案外今からでも遅くないことが多いんです。

やりたかったこと、絶対やっておくべきです。

少しでも興味を持ったことは味見程度でもやってみましょう。

新しい発見があるでしょう。

そんな時あなたの脳はビシビシ刺激がはしっています。

以上、いくつかの例をあげましたが、実際認知症を発症してから実践して、

認知機能が改善するような成果を出しているものもあります。

そして認知機能の改善効果は予防の段階でも効果を発揮します。

ですので、

この知識を知った時点から習慣化してしますのが早期予防、早期対策に他なりません。

生活習慣病の予防、治療、生活習慣の見直しも大事

いくら脳に刺激を与えても、物理的に脳の血管が詰まる等の障害があると、

脳にダメージがいき、認知症の進行を促進してしまいます。

脳の健康と体の健康は別々にかつ同時に対処していく必要があります。

体の健康は生活習慣、ストレス、食事と多岐に渡ります。

たくさん試して、できるだけ長く続けよう

今回ご紹介した認知症予防法も、体の健康を維持することも、

できるだけ長く続けていただくことが重要になります。

そのためには無理せずできるものを欲張って試すことが大切です。

認知症の発症の要因は1つではありません。

何がいいかは人によっていろいろで、

しかも1人1つではありません。

脳を刺激する体験はできるだけ多く、

本はいろんなジャンルを読んで、

ストレス発散の方法はたくさん用意して、

サプリは1粒にいろいろな成分が入っているものを選んで、

食事は体にいいもの、手作りをたくさん取り入れる。

そのためにはいろいろな知識が必要です。

一緒に勉強していきましょう。

  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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