睡眠の重要性は皆さん知っての通りですが、
睡眠は脳の疲れを取り、脳内のゴミを排出するため、非常に認知症予防にとっても大事な習慣です。
テレビやニュースでも、睡眠時間が何時間であればいい、とか、快眠法や快眠グッズ等がよく紹介されますが、
生活習慣が千差万別であるように、睡眠の取り方も考え方も人それぞれ違うのです。
まずは「睡眠」についての概要を頭に入れましょう。
そうすれば自分に合った睡眠も自ずと分かってくる可能性があります。
「睡眠」を知って認知症予防
睡眠の仕方や不眠の原因についてまず知ることで、自分の悩みを客観的に考えてみましょう。
そうすると意外とよく眠れたりするんです。
睡眠の仕組みを知ろう
睡眠はご存知の通り、自分でコントロールできません。
「睡魔が襲う」と言う言葉があるように、強制的にシャットダウンさせることまであります。
それには、
「脳が疲れを感知して眠くなる仕組み」
と、
「夜暗くなると眠くなる仕組み」
が私たちに備わっているからです。
脳が疲れて眠くなる仕組み
「脳疲労」という言葉がありますが、脳も働きすぎると休ませる必要があることがわかっています。
厳密には脳疲労と眠気は違うものですが、
脳が疲れてくると睡眠をとって休ませる必要がある、とご理解ください。
(ちなみに勉強のしすぎで疲れることはないとも言われています。)
脳は、身体を制御するために色々司令を出したり、膨大な情報を処理したりすることで疲労します。
脳が疲れてくると、「睡眠物質」が溜まります。
この睡眠物質の正体ですが実はまだ全ては明らかになっていません。
現時点では、「アデノシン」という物質が睡眠物質として働いていることは確認されています。
その他にもあるといわれていますが、1つの物質で制御できないほど睡眠は複雑でかつ不可欠なものだと考えられます。
(このアデノシンは、カフェインによってその作用が抑制されることも確認されています。)
睡眠物質は起きていた時間に比例して、脳脊髄液の中に溜まっていきます。
そうすると、眠気を司る脳の視床下部にある睡眠中枢が活性化し、脳を休ませるために眠気が起こります。
夜暗くなると眠くなる仕組み
夜になると自然に眠くなるのは、体内時計によるものです。
体内時計はサーカディアンリズム(Circadian rhythm)ともいいますが、我々の細胞の遺伝子に刻まれている「時計遺伝子」によって作られています。
通常は体内時計の周期は24〜25時間です。
地球の自転周期に合うようにリズムを刻んでいますが、細胞内の時計周期は厳密には24時間より少し長く、その分”ズレ”も生じてきます。
この周期をリセットするために欠かせないのが太陽の光です。
起床直後に日光が目に入ると、体内時計がリセットされて、体全体が活動的になります。
体内時計がリセットされて14〜16時間ほど経つと、体内時計の指令によって皮膚から熱を放出します。
そうすると、熱を放出した後に身体内部の温度は下がっていきますので、次第に休息体制へ向かっていきます。
その1〜2時間後に自然に眠りような仕組みになっています。
具体的な時間でいえば、午前7時に日光を浴びた場合は、午後10時から午前1時の間に眠りに入ることになります。
眠りにつくための2つの仕組みが乱れると不眠につながる
上記の「脳が疲れて眠くなる仕組み」と「夜暗くなると眠くなる仕組み」の2つが乱れると、不眠に繋がりやすくなります。
この2つの仕組みを乱れさせる原因の1つに、睡眠に対する理解不足による誤解があります。
例えば、
「明日の朝の起床時間が早いので、早く寝る」
というのは、眠くないのに布団に入ることになり、身体はまだ体温が下がらず休息態勢が整ってはいない中で無理に眠ろうとすることになります。
さらに不眠に拍車をかけるのは、睡眠についての固定観念です。
「睡眠時間は、1日最低でも8時間以上」
睡眠は時間が全てではありません。
成人の適切な睡眠時間は一般的には7時間前後とされていますが、質も量と同じくらい大切です。
こうした睡眠についての誤解や固定観念があると、寝つきが悪くなったり不眠に繋がりやすくなったりします。
不眠と睡眠不足の違いは?
不眠と睡眠不足というのはおそらく皆さんが思っている通りの違いがあります。
不眠とは、寝床に入って休む時間は十分に確保できているのに寝られない、すぐに起きてしまったりして質のよい睡眠を得られない状態です。
一方睡眠不足は、睡眠をとる時間が十分に確保できていない状態です。
絶対的睡眠時間不足の状態です。
不眠と睡眠不足はこうした違いはありますが、
結果的に脳を休めたり心身をリセットすることができずに、日中の不調感、果てには心身に重篤な健康被害を及ぼす結果につながるということは共通しています。
不眠の種類
不眠にはいくつかのタイプがあります。
大きく3つに分けて紹介します。
寝つきが悪いタイプ
眠たくないまま体温が下がり始める前に寝床に入ると、体が寝る態勢になっていないため、寝つきが悪くなります。
考え事やスマホなどでの情報が脳に入ってくる状態が続いていても、目が冴えて寝つけません。
途中で目が覚めるタイプ
私たちは、必要時間以上は眠ることができないことがわかっています。
眠ろうとしてベッドで長く横になっていることで途中で目が覚めたり、眠りが浅くなったりします。
また、だらだらと寝て起きてを繰り返すと、活動的な時間が短くなり、睡眠物資くが十分にたまりません。
そうなると、深い眠りが得られず、途中で目が覚めたり、眠りが浅くなったりします。
改善策は寝床にいる時間を適切に調節する必要があります。
だいたい7時間ほどを寝床にいる目安としましょう。
早く目が覚めるタイプ
加齢に伴って体内時計は早まります。
そうなると早く目が覚めてしまいます。
こうした加齢に伴う早期覚醒現象は、男性の方が中年以降と早く現れやすく、女性の方が遅く現れる傾向にあります。
だんだん早く寝が覚めるようになったとしても、日中に不調を感じなければ実はあまり気にすることはない不眠のタイプです。
不眠や睡眠不足の身体に及ぼす影響
睡眠の量と質が確保されていないと、体や心の健康に様々な影響を及ぼします。
活動の質の低下
一般的に睡眠時間が6時間未満になると、翌日の日中に眠気を感じるようになります。
日中の強い眠気は、集中力や注意力の低下を引き起こし、疲れやすく、イライラ感が襲ってきます。
生活習慣病になるやすくなる
不眠や睡眠不足が続くと、糖尿病、高血圧、脂質異常症をはじめとする生活習慣病が起こりやすくなることがわかっています。
さらに、これらの要因が重なると、動脈硬化が進行して、心臓病や脳卒中を発症する危険性が高まることもわかっています。
うつ病になりやすくなる
不眠や睡眠不足のある人は、うつ病になりやすいことがわかっています。
うつ病とまでは行かないまでも不眠や睡眠不足が脳に与える影響は甚大で、
もちろん認知症になる危険性も高め、不慮の事故も含めるとあらゆる種類の死亡率を高めることに繋がっていると考えられています。
適切な睡眠時間とは?
実は健康な人の睡眠時間は、人種・地域・時代に関わらずだいたい決まっているそうです。
1日の時間は今も昔もあまり変わっていないので、それに合わせて遺伝子レベルで決まっているものかもしれませんね。
100万人の成人の6年後の死亡率を追跡したアメリカの調査では、男女とも1日の睡眠時間が6.5〜7.4時間の人が、最も長生きだったとの結果が出ています。
(Kripke DF, et al. Arch Gen Psychiatry. 2002)
睡眠時間が長過ぎても短過ぎても死亡率は高くなっていたとのことです。
8時間の睡眠を必ず確保する必要はなさそうですね。
不眠や睡眠不足を改善するためには?
不眠を改善するにはやはり生活習慣の見直しが必須です。
重症の場合、医療機関を受診することも検討になるかもしれません。
しかしながら、認知症予防の観点から医薬品の眠剤を使用することは推奨できません。
脳に与える影響と依存性、認知機能に対する影響のどれを見ても、将来的に認知症の発症を早める恐れが拭えないからです。
なにはともあれ自分の睡眠に不安がある場合は、客観的に自分の睡眠を見直してはどうでしょう。
「睡眠日誌」を自分でつけるにもいい方法です。
- 寝床に入って時間
- 眠りについた時間
- 目を覚ました時間
- 寝床から出た時間
- よく寝れたか
- 日中の眠気
等を記録しておくとよいでしょう。
ただ、寝ている時のことなのでなかなか記録がとりづらいという方は、
例えば西川産業株式会社が行っている「眠りの相談所」という。
睡眠に対する悩みを相談できる場所もあります。
私も先日行ってみました。
2週間ほど活動計を装着して日々を過ごした後、
結果をグラフにして客観的に示してくれます。
寝つきや寝起き、寝返りの数やどの方向を向いて寝ているか、夜中の覚醒の回数など、驚きの連続でした。
寝具の合う、合わないも重要だと気づきましたが、気になる方は相談してみてください。
睡眠は「脳のゴミ」を排除するために必須です。
ある程度の量と、質の良い睡眠を確保することは、今日からできる認知症予防といえます。
脳には適切な栄養を十分に与え、睡眠でゴミを取り除いてあげることが大切なのです。
栄養については無料の書籍をダウンロードしてぜひ確認くださいね。
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