パーキンソン病と認知症の関係について

認知症の基礎知識

パーキンソン病は認知症のリスク?見逃せない初期症状と認知症との関係とは?

今回はパーキンソン病について紹介していきます。

というのも、最近多くの方とSNSを通じて対話をさせていただいておりますが、パーキンソン病で悩んでいらっしゃる方が非常に多いということがわかりました。

そしてパーキンソン病の皆様はやはりこの先の認知症のリスクについて関心があるということもわかりました。

パーキンソン病を知ろう!>

パーキンソン病と認知症は大きな関わりがあります。

知ることで回避できること、安心できることもありますので、参考にしてみてください。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病は、脳の神経細胞に異常が起こり、手の震えや歩行困難などの運動症状が現れる病気です。

パーキンソン病をお持ちの方は、稀に40歳代で若年性パーキンソン病を発症する方がいらっしゃいますが、ほとんどが高齢者です。

日本では約20万人ほどパーキンソン病の患者さんがいらっしゃるということです。

パーキンソンはドパミンと呼ばれる神経伝達物質が減少することが主な原因です。

ドパミンは脳からの信号そのものとなる物質です。

私たちが体を動かすときは、脳の大脳皮質から全身の筋肉への運動の指令が伝えられます。

ドパミンはその調節を担っているので、ドパミンが減少すると運動の指令をうまく調節できないため、運動症状が現れます。

ドパミンを作っているのは、脳の黒質線条体という部位です。

パーキンソン病では、その黒質の神経細胞が減少してしまうので、作られるドパミンの量が減ってしまうのです。

パーキンソン病でも元気な生活は続けられる

パーキンソン病では黒質の神経細胞が減少するということでしたが、なぜ減少してしまうかどうかはまだはっきりとわかっていません。

そして神経細胞がなくなってしまっては、神経細胞をもとに戻す治療薬はありません。

これは認知症とよく似ています。

ですので現在のところ、パーキンソン病は発症すると病気そのものを治すことはできない疾患です。

しかしながら、神経細胞の減少がどんどんと進んで行く前に病気を早く発見して早期治療を開始すれば、病気をコントロールして長く元気な生活を送ることができます。

早期発見のために特徴的な症状を知ろう!

パーキンソン病をQOL(生活の質)を下げずにコントロールするには、早期発見が必要と言いました。

では、早期発見のためにパーキンソン病の特徴的な症状を進行度別に知りましょう。

進行度1、体の片側に症状が現れる

パーキンソン病の最も初期から見られる症状は、手足が震えることです。

最初は片側から現れます。何もしないでじっとしている時に震えやすいのが特徴で、

多くの場合は、震えを意識したり体を動かしたりすると軽くなったり症状が消えたりします。

ただ、この症状は必ず出るものでもないので、

震えが出ないからパーキンソン病ではない、とは言えません。

進行度2、体の両側に症状が現れる

先ほどの手足の震えも、最初は片側だったものが、症状が進行するにつれて徐々に両側に見られるようになっていきます。

そうすると、日常生活での動作もどんどん遅くなっていきます。動きも小さくなります。

歩くのが遅くなったり、足を引きずったり、服を着るのに時間がかかる、ということで周囲の人たちに気づかれる場合があります。

無表情になる、声が小さくなるといった症状が出ることもあります。

筋肉の緊張が高まるために、筋肉が硬くなってしまいます。

首や肩をうまく回せない、とか、手や足をスムーズに動かせないと感じるようになります。

進行度3、バランスが保てなくなる

体のバランスが保てないために、姿勢を立て直すことが難しいとか、方向転換が難しいというのは、パーキンソン病がかなり進行した状態と考えられます。

初期からバランスを崩すことは稀なので、初期からバランスを崩す場合は他の病気を疑います。

進行度4、介護が必要になる

いよいよバランスが保てないとなると、介助が必要となります。

手足も思った通りに動かせなので一人で何かをすることが難しくなります。

進行度5、車椅子が必要になる

さらに進行すると歩行できなくなり、車椅子での移動になります。

転んでしまうと一人では起きられないので、付き添いの方が必要になります。

そのほかの症状は?

パーキンソン病は運動症状の他にも様々な症状が現れます。

便秘、頻尿、立ちくらみなどの自律神経障害や、睡眠中に夢に合わせて体が動いてしまう「レム睡眠行動障害」などの睡眠障害、嗅覚の低下などの感覚障害、嚥下障害などが起こりこともあります。

不安感や”うつ”などの精神症状や、認知機能障害が現れたり、幻覚などが現れるレビー小体型認知症を合併することがあります。

早期に現れる症状を見逃さないことがQOLを落とさない鍵

パーキンソン病に早く気付くためには、最初に現れることが多い手足の震えなどの症状を見逃さないことが大切です。

周りの方から、歩き方が変わったとか、動作が遅くなった、表情が暗くなった、などと言われた時は要注意です。

最近わかってきたことは、前駆症状、いわゆる前触れが現れることがあるということです。

運動症状に先行して、嗅覚低下、レム睡眠行動障害、便秘、うつなどがあれば、少し疑って見るものいいかもしれません。

ただ、今まで説明してきた症状は、高齢になると、年のせいや、骨や関節の病気、さらには認知症ではないか?と思ってしまって

受診が遅れる場合があります。

認知症とパーキンソン病は重複する部分もありますが、パーキンソン病の方がより特徴的な症状ですので、

思い当たることがあれば脳神経内科を受診しましょう。

画像検索で早期の診断が可能です。

パーキンソン病の治療法は?

パーキンソン病はその原因がドパミンの減少と分かっているので、そのドパミンを薬で補うということが治療の基本となります。

それを効率よく行うための薬や、症状に応じて改善のための薬が加わることもあります。

このドパミン補充療法で震えなどの運動症状をかなり抑えることができます。

進行しても薬を適切に組み合わせて使うことで、より長く自立した生活を送り、QOLを維持することを目指します。

早くから薬を使うと耐性がついて薬が効かなくなる、と言われていたこともありますが、現在ではその心配はないと考えられています。

使用される薬はどんなもの?

パーキンソン病と診断されたら迷わず薬を使い始めることになりますが、

現在はどういったお薬が使われるのでしょうか?

基本はドパミンの不足を補う薬で、レボドパなどのドパミンそのものに変わる成分の薬と、ドパミンアゴニストと呼ばれるドパミンに似た物質でをの働きを補うものになります。

実際は年齢や症状で使い分けがありますが詳細は割愛させていただきます。

その他、MAO-B阻害薬と呼ばれるドパミンを長く脳内にとどめておくような薬もあります。

効き目は弱いですが、副作用が起こりにくいのが特徴です。

その他、現れている症状によって症状を抑える薬が使われますが、多剤併用は副作用を生みますのでできるだけ薬をコントロールすることが目指されています。

薬で症状をコントロールできなくなったら?

症状が進行していって、薬物治療では症状をコントロールできなくなった場合は、機器を使ったデバイス支援治療が検討されます。

脳の奥の運動を調節する部位まで細い電極を入れ、胸部の皮下に埋め込んだ装置から弱い電気刺激を送って、

神経細胞の働きを調整することができます。

他には、胃ろうを介して腸から持続的にレボドパを送り込む方法もあります。

これらの治療は、適応条件もありますので、気になる方は専門の先生にお尋ねください。

治療と並行してリハビリやドパミンを出すことが大事

リハビリはパーキンソン病の悪化を防ぐ効果があることが確かめられています。

パーキンソン病と診断された場合は薬物治療と合わせてすぐにリハビリを始めます。

リハビリはウォーキングや筋トレなど運動機能を維持するためにできるだけ毎日行うことです。

日常生活では、周囲の人は、本人ができることは時間がかかっても本人にしてもらって、できないことを手助けするようにしましょう。

そのほか、ドパミン不足で起こるパーキンソン病ですが、ドパミンを出すような行動をすることも有効です。

ドパミンは実は生きるための意欲のホルモンです。意欲的な生活を送ることでドパミンの生成量を増やすことができます。

また、幸福感でもドパミンは放出されますので、やる気と感動するような体験があると、幸福を感じ、ドパミンが多く産生されます。

新しいことに興味を持ち、実際に出歩くことが大切だということです。

認知症とパーキンソン病

では、パーキンソン病と認知症はどのような関係があるでしょうか?

結論から書きますと、

パーキンソン病の患者さんの約3割が認知症を合併されており、さらにパーキンソン病を発症すると認知症のリスクは6倍にもなると言われており、認知症とパーキンソン病は関係があると言えます。

その関係性について詳しく見てみましょう。

パーキンソン病から始まる認知症と認知症から始まるパーキンソン病

パーキンソン病は認知症のリスクと書きましたが、その症状の進行には、

パーキンソン病から始まる認知症と、認知症から始まるパーキンソン病があります。

つまり、運動障害からだんだんと認知機能障害が表れるパターンと、認知機能の低下から運動機能が衰えてくるパターンがあるということです。

運動障害から認知機能障害が表れるパターンは、認知症を伴うパーキンソン病と呼ばれ、高齢者になるほど発症率が高くなり、妄想や幻聴も出てきます。

一方、認知機能の低下から運動障害が表れてくるパターンは、いわゆるレビー小体型認知症と呼ばれ区別されています。

レビー小体型認知症は、認知症の中ではアルツハイマー型認知症についで患者数の多い認知症です。

日によって波のある、軽いもの忘れから始まるのが特徴で、その後幻視、幻聴、睡眠時異常行動が表れます。

パーキンソン病から始まる認知症と、認知症から始まるパーキンソン病は、病理学的には同一の病気となっています。

それは、黒質の神経細胞が減少するにつれてレビー小体が増えるという相関関係があるので、

両方とも進行すれば黒質の神経細胞がどんどん減っていき、レビー小体はどんどん増えていく病態であるからです。

パーキンソン病と認知症、特にレビー小体型認知症は非常に大きく関わっているということです。

パーキンソン病とアルツハイマー型認知症

もちろんパーキンソン病になったからといって、レビー小体型認知症のみ気をつければいいというわけではありません。

最近では混合型認知症と言われる、2つ以上の認知症の型の合併することも少なくありません。

多いのが、やはりアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の合併です。

パーキンソン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー型認知症は異常タンパクの増加という点で似ていて、実際にレビー小体の発生とアミロイドβの蓄積は並行して起こ得ることも確認されています。

パーキンソン病は体の自由が利かなくなるので、精神的に不安定になることも多く、ストレスも溜まりやすい病気です。

ストレスや睡眠障害は認知症予防のためには改善しなければいけない点です。

パーキンソン病をお持ちの方は、不必要な認知機能を防ぐためにも予防可能な認知症、アルツハイマー病や脳血管性認知症に関してはしっかりと対策をすることが必要と言えます。

将来のリスクのために、今からできることは是非すぐに行動に移してください。


パーキンソン病について紹介させていただきました。

黒質の神経細胞の減少を抑える方法はまだわかっていません。ですので減少するドパミンの量を増やすしかありません。

実は天然にもドパミンを含有しているものがあり、それはムクナ豆(八升豆)という豆です。

日本でも栽培されている豆で、サプリメントとしても売られています。

そういうものもうまく活用してQOLを維持していきましょう。

日頃の生活習慣については、認知症予防と通じるものがありますので、食生活と運動に気をつけましょう。

食生活に関しては書籍にまとめていますので参考にしていただければ幸いです。

発症してものは進行を抑える、予防できるものは今から実行する、その前向きな姿勢が何よりも大切です。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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