認知症の基礎知識

認知症の初期症状は嗅覚から?!鼻を鍛えて認知症予防!!

嗅覚は記憶よりも先に失われる

「これどっかで嗅いだことある!」

「この香りなんだっけな?」

匂いを嗅ぐだけで昔の記憶が戻ってくる体験は誰しもが経験したことがあるのではないでしょうか?

匂いを司る嗅覚ですが、

認知症の初期症状では物忘れ等の認知機能の低下より先に、嗅覚の機能低下が起こることがわかっています。

それは、認知症、特にアルツハイマー型認知症では、脳内で記憶を司る海馬が萎縮していく前に、

それよりも外側にある「嗅内皮質」が萎縮、変形し、その機能が低下するからです。

嗅覚が失われ日常で起こる出来事

実際に認知症の方の日常でよくある症状として、

・ジュースと水、漂白剤の違いがわからない。

・鍋を焦がしても気がつかない。

・牛乳が腐っていても気がつかない。

・料理の味がわからない。

などの嗅覚に関係する症状が多数見られます。

レビー小体型認知症でも嗅覚機能低下が起こる

実際アルツハイマー型認知症の患者さんでは、高確率に嗅覚機能低下が起こっています。

嗅覚の役目として、匂いに気づくといった検知する能力と、

この匂いは何の匂いだ?というような識別する能力があります。

認知症では特に識別する嗅覚が早く失われると言われています。

そしてこの嗅覚の機能低下は、アルツハイマー型認知症よりも

レビー小体型認知症で頻度が高く、かつ重度であるということで、

レビー小体型認知症の診断基準にもなっています。

認知症診断前の軽度認知障害(MCI)の状態から起こる嗅覚機能低下

アルツハイマー型認知症では、脳の中にアミロイドβなどの異常たんぱくが溜まり、

脳の機能を抑制していきます。

海馬が侵されると記憶障害が起こり、認知機能の低下が表れますが、

それより先に嗅内皮質が侵され嗅覚が衰えます。

そしてこの症状は、認知機能の低下が自覚として

あれ?

と思う前に、匂いに対して鈍感になるということになります。

この嗅覚機能の低下は、軽度認知障害(MCI)の状態では、

すでに起こっていると考えられます。

嗅覚で

あれ?

と思うことがあれば、冷静に相談を受けることが必要な可能性があります。

もっと言えば、認知症の原因であるアミロイドβが

そもそも25年も前から溜まり始めているので、嗅覚異常が出てきた時点では結構な量のアミロイドβが溜まっているものと思われます。

ただMCIの状態ではまだ神経細胞の多くは死滅していないので、

活性化することで衰えを防ぐことができます。

嗅覚のトレーニング方法

嗅覚はアセチルコリン系の神経経路で支配されていると考えられていますが、

アルツハイマー型認知症の原因の1つである、アセチルコリン神経系の脱落が起こることも、

嗅覚障害が起こる原因と考えられています。

では、このアセチルコリン神経系をトレーニングすることはできるのでしょうか?

最近、アロマテラピーのような匂いのトレーニングで、

この神経伝達物質のアセチルコリンが増加するということが明らかになってきました。

ヒトでの実験で、実際アロマテラピーによって認知機能が改善したというデータもあります。

ただ、現時点ではどの匂いが一番効果的か、までははっきりと結論が出ていないようです。

それにアセチルコリン産生細胞そのものは、増えないという見解もあります。

いずれにせよ、認知機能も嗅覚異常も、トレーニングや刺激によりある程度改善するあります。

要するに、刺激を与えることで脳は活性化し、認知症の発症を遅らすことができるということであると考えています。

日々の生活で五感をフルに活用しましょう!

五感を刺激して脳を刺激し活性化しましょう。

  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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