減塩は認知症予防に必須です。

認知症の危険因子 認知症予防法

認知症予防に減塩のススメ。まだまだ日本人は塩分過多だった!?

だんだんと寒い季節になってきました。

日頃から健康のために血圧を測定している方も多いかと思いますが、こんな話を聞いたことがあるでしょうか?

”夏は血管が広がるから血圧が低くなって、逆に冬は血管が縮こまって血圧が高くなる”

確かに起こり得る変化ではありますが、実はこれを鵜呑みにするとあまり良くないことがわかっています。

どういうことかというと、

気温の変化ぐらいでは、血管はたいして伸び縮みしない

ということです。

血圧が大きく変動するような血管の変化は、ヒートショックが起こりやすいお風呂場などの急激な温度差が問題であって、それは浴室を温めることで防ぐことができます。

さらに言えば血管は年齢とともに弾性が失われます。

そこまで伸び縮みできる血管ではなくなっている可能性もあります。

何が言いたいかかというと、

夏に血圧が下がり、冬に血圧が高くなるような人は、血管の拡張云々ではなく、塩分調節による影響の方がかなり大きいことです。

特に、日頃から薬物コントロールをしているような人で血圧の季節変動が大きい人は、塩分摂取量が多い傾向にあります。

今回は、高血圧に直接関係し、認知症に発展する可能性のある塩分について高血圧との関係を中心に紹介しようと思います。

日本人にとって減塩は病気の予防に必須

周りを海に囲まれた日本人にとって、塩は切っても切れない縁ですが、塩分の摂りすぎは百害あって一利なしです。

特に塩分の摂りすぎによって問題となるのは高血圧です。

高血圧は生活習慣病ですが、まさに日頃の生活習慣、食事の塩分量が直接関係する疾患です。

高血圧はもちろん認知症の発症を高めますので、減塩を心がけた食生活は必須です。

なぜ塩分過多だと高血圧になるのか?

まずは知識として、高血圧と塩分の関係について紹介します。

私たちの体は、水分と塩分が一定に保たれるように調節機能が働いています。

体液や血液中に含まれている塩分の濃度も常に0.9%(100mL中に0.9g)と一定に保たれていて、

それよりも濃度が高くなったり低くなったりすると生命活動を維持できなくなり、命の危険さえも起こり得ます。

この塩分の調節は、腎臓で行われています。

塩分の多い食事をすると、腎臓は余分な塩分をろ過して、水分と一緒に尿として排泄することで塩分を調節します。

ということは、塩分を摂り過ぎればそれだけ腎臓を働かすことになるのです。

ラーメンを食べると水が飲みたくなるとか、お寿司を食べると喉が渇くような体験は誰しもがしたことがあると思います。

(むしろ現代人は”喉が渇く”ことが当たり前すぎて自覚できていないとも言われていますが。)

それは血液の塩分濃度を一定に保つために体内の水分量を増やそうとするために、水分を欲しがるのです。

これによって血液量も増え、血管の中の圧力、血圧が上がります。

この上がった血圧を利用して腎臓は塩分を尿として排出し、バランスをとっています。

このバランスが崩れるときは、すなわち腎臓が処理しきれないほどの塩分を摂りすぎている時です。

腎臓が処理しきれないと、血圧の上昇が続き、血管や腎臓がその血圧に耐えきれなくなりさらに血圧を上げるという悪循環になってしまいます。

1日の塩分摂取量の目標知っていますか?

厚生労働省の基準によると、

健康な成人男性で1日の塩分摂取量は8.0g未満、女性なら7.0gに抑えることを推奨しています。

小さじ1杯が5gなので、小さじ1杯半くらいですね。

男女に差があるのは体格差によるものですが、この1日の塩分摂取量の上限目安は、2015年からより厳しめに設定されました。

塩分の摂り過ぎが健康を害することがはっきりとわかってきたからです。

これがさらにすでに高血圧を持病としている方は、男女とも6.0g未満に抑えることが推奨されています。

しかし、平成27年国民健康・栄養調査の概要によると、実際の塩分摂取量の平均は男性が1日11g、女性は9.2gとなっています。

年々塩分摂取量は減ってはいますが、まだまだ適正値には程遠いと言えるでしょう。

塩分量とナトリウム量の違いに注意!

ここで少し余談ですが、実際に食べ物を購入するときに、塩分の量は記載されています。

記載方法は商品によって違いますが、大きく、「食塩相当量」「ナトリウム量」として塩分は表記されています。

ここで注意ですが、「食塩量」=「ナトリウム量」ではありません。

食塩はナトリウムと塩素が結合した化学式NaClの化合物ですが、分子量から計算すると、

食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×2.54

という関係になります。

先ほどの1日の食塩摂取量の目標値は、食塩ですので、ナトリウム量に換算すると、

食塩8gでナトリウム3.14g

食塩7gでナトリウム2.76g

となります。

ナトリウム量表示で塩分が少ないと思っても、実際に塩分に換算すると結構多いことがありますので注意が必要です。

日本で減塩をするなら知識が必要

高血圧の予防や改善には、生活習慣の改善、特に減塩は欠かせません。

しかしながら、今まで当たり前に食べてきた食事が実は塩分が多かった、自分の好きな味が塩分が多い味だった、となった場合、

それは急に変えるとなると味気なかったり美味しく感じなかったりして長く続けることができません。

そういう場合、行政の施策で改善した例もあります。

イギリスでは国の政策として食品メーカーに対して、加工食品に含まれている食塩の量に数値を定めて、それを達成するように通達しました。

その結果、イギリス国民全体の血圧が下がったり、脳卒中や心筋梗塞の死亡率が低下するという大きな成果が得られています。

このやり方のすごいところは、

消費者は普通に買い物をして食事をとるだけで、気づかないうちに自然と減塩できたことです。

このような社会の仕組みを行政が整えてくれたらいいのですが、日本はそこまでできていないのが実情です。

では私たちが減塩をするにはどうしたらいいのでしょうか?

それは、やはり減塩の工夫や塩分の多い食品を知り、選択できる知識と意識を持つことに他なりません。

減塩の基本

そうは言っても皆さん減塩について「こうしたらいいんでしょ?」という知識はなんとなく聞いたことはあるかと思います。

大まかに減塩の基本を紹介します。

調味料を考える

減塩の基本はまず料理に必ず使う調味料を考えることになります。

醤油や味噌も減塩タイプのものを選ぶことで何気なく食べる塩分量を抑えることができます。

また、塩味は減らして、”だし”をたっぷりと使います。

塩味を旨味で置き換えるということです。

醤油やソースは直接かけずに”つけて”食べる、スパイスやハーブを使って味にアクセントを加えることも有効です。

加工食品を考える

現代社会はコンビニの普及でいつでも食べ物が手に入る時代ですが、加工食品には驚くほど塩分が入っている場合があります。

医薬基盤・健康・栄養研究所の報告によると、日本人が食塩を多くとっている食品ランキングは、

1位 カップ麺 (一食あたり食塩5.5g

2位 インスタントラーメン (一食あたり食塩5.4g

3位 梅干し (一食あたり食塩1.8g)

4位 きゅうりの漬物

5位 からし明太子

6位 塩サバ

7位 白菜の漬物

・・・・・

と続いていきますが、1位と2位のラーメン類が圧倒的な塩分量です。

一食で1日の塩分量に迫る勢いですので、ラーメンは汁は残すといった覚悟が必要です。

栄養成分表示を考える

平成27年に施工された食品表示法では、加工食品のパッケージの栄養成分表示に「食塩相当量」を記載することを義務付けています。

何かを購入するときは、食品相当量をチェックしてコントロールする習慣をつけましょう。

だいたいが100gあたりの表示になっているので実際の内容量と掛け算するのを忘れずに。

減塩食品を考える

日本高血圧学会では、学会独自の基準を満たした減塩食品のリストを公表しています。

(参考:https://www.jpnsh.jp/data/salt_foodlist.pdf

その他にも減塩に関する取り組みや実際の成果等も情報として発信されていますので、ぜひ参考にしてみてください。


現代の食生活は、いつでもどこでも手軽に安価で食事ができる時代であり、孤食の時代です。

自炊をする人の割合は減ってきており、自炊するにも時短になる加工食品を使って調理することが大半になってきました。

食生活はよりはより便利に変化していますが、

その中で少しでも塩分摂取量を減らすように意識することが大切です。

加工食品や外食には全て自分で作る以上の塩分が入っていると考えても大げさではありませんから。

認知症予防のための良い成分をまとめています。

ぜひ読んでみてください。

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  • この記事を書いた人

山根一彦 医学博士

一般社団法人認知症協会理事。徳島大学大学院医科学教育学部卒。医学博士。 生体防御・感染症代謝を専門とし、ミトコンドリアの活性化、インフルエンザの重症化等を研究。第一三共ヘルスケア株式会社、SBIアラプロモ株式会社など、複数の大手製薬企業で商品の開発・改良に参加。知財として価値の高い複数の特許を取得。 2017年、認知症協会理事に就任。以後、認知症予防に関する講演・執筆活動を行う。2018年より一般の読者向けに無料メール(LINE)マガジンを開始し、現在の購読者は80,000人超え。著書「認知症にならない最強の食事」。

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